アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した「ハーズバーグの二要因理論」は、仕事に対する満足と不満足を起こす要因に関する理論です。
ハーズバーグは、エンジニアと経理担当事務員を対象に、「仕事上どんなことによって幸福と感じ、また満足に感じたか」「どんなことによって不幸や不満を感じたか」という質問を行いました。その結果としてわかったのは以下の2点です。
・従業員が「仕事に不満を感じるとき」は、その人の関心は自分たちの作業環境に向いている
・従業員が「仕事に満足を感じるとき」は、その人の関心は仕事そのものに向いている
すなわち、(1)の衛生要因を解消すれば、(2)のような動機づけ要因が挙がるというわけではなく、「満足」に関わる要因(動機づけ要因)と「不満足」に関わる要因(衛生要因)は別のものであるというわけです。衛生要因、すなわち人事評価や報酬を上げても、ある程度の不満は解消されるものの、直接的に仕事への動機づけ(=モチベーションの向上)にはつながらないということなのです。
福利厚生なども同じです。新卒採用などでよく、「学生は福利厚生の充実度を重視する」ということもいわれますが、福利厚生はあくまでも「不満要素(衛生要因)」であり、どんなに充実していようとも、それが仕事へのモチベーションにはつながりません。
人事評価制度に不満の理由
続いて、なぜ現状の人事評価制度に対して不満を感じる人が多いのかについてお伝えしておきましょう。よくある不満として、
「どうやって評価されているのかわからない」
「頑張っているのに評価されないので頑張る意味がない」
「評価基準が不明瞭」
などといった内容のものが挙げられます。なぜそのような不満を感じるのかというと、人事制度があってもうまく運用されていないためです。
そしてうまく運用されていない原因の1つが、評価項目が多すぎることにあります。
これまで私がコンサルに入った会社の中には、この評価項目が130もあったところがあって、毎年1回の査定の期間は、他の仕事が手につけられないほどの大仕事になると言っていました。
しかし、一人ひとりに対して130もの評価項目があったら、10人の部下がいる上司が、すべての人のすべての項目をきちんと評価することなど実際は不可能です。もはや人事評価制度をつくること自体が目的になってしまっている典型例です。
評価項目がたくさんあったほうが不公平感はないように思うかもしれませんが、項目が多すぎることでかえって「何が大事なのかがわからない」人事評価制度になってしまうのです。
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