山崎「ランチパック」で和梨が復活した意外な経緯 秋葉原本社なのに「市川のなし」のナゾに迫る

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山崎製パンへの地元ナシ農家の本音は……

実際のところ、市川のナシ農家は山崎製パンをどのように見ているのだろうか。大町梨街道沿いの大庄園を訪ねて、山崎製パンの取り組みについて尋ねてみた。

かつて大町梨業組合の副組合長を務めたこともある園主の湯浅光男さんはこう語る。

「わざわざ口には出さないかもしれないけど、山崎製パンと市川市農協経済センターには、ナシ農家はみんな感謝しているんじゃないかな。山崎製パンが農協経由で規格外のナシをよい値段で買い上げてくれているし。害虫や病気、さらには今年みたいな雹害など、良品が収穫できない場合のセーフティーネットになっているのは間違いない。この点で市川のナシ農家はかなり恵まれてるよね」

続けてナシを用いた商品についても感想を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「これについてもナシ農家は喜んでいると思うよ。特にランチパックに対して。あのメジャーブランドのパッケージに『市川のなし』と明記してくれているんだからね。少なからず市川のナシの知名度向上や青果の購入にも結びついているはず。山崎製パンからは和梨商品を色々と出してもらってるけど、『和梨バウム』はうまい。初めて食べた時に想像を超えてきてビックリした」

地元のナシ農家・湯浅さんも評価する和梨バウム(写真提供:山崎製パン)

実際に湯浅さんは、「和梨バウム」をよく手土産に使っているのだそうだ。

8月下旬から、ナシの品種は「幸水」から「豊水」や「あきづき」、さらには各県が育成した品種に切り替わる。

「『幸水』だけでナシのシーズンを終わりにしてしまってはもったいない。晩生の品種ほど味や食感に個性がある。9月のナシや10月のナシもぜひ味わってほしい」

ナシには「幸水」以外にもおいしい品種があることは、まだまだ消費者に知られていない、と語る湯浅さん。食品各社から和梨を用いた季節限定商品が発売されるこの時期こそ、品種名を意識しながら青果のナシも食べ比べてみたいものだ。

竹下 大学 品種ナビゲーター

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たけした だいがく / Daigaku Takeshita

1965年東京都生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、キリンビールに入社。新規事業としてゼロから花の育種プログラムを立ち上げ、プロジェクト中止の決定を乗り越えて同社アグリバイオ事業随一の高収益ビジネスモデルを確立。2004年には、All-America Selectionsが北米の園芸産業発展に貢献した育種家に贈る「ブリーダーズカップ」の初代受賞者に、ただひとり選ばれる。技術士(農業部門)。著書に『植物はヒトを操る』(毎日新聞社、いとうせいこう共著)、『東京ディズニーリゾート植物ガイド』(講談社、監修)、『日本の品種はすごい うまい植物をめぐる物語』(中央公論新社)、『野菜と果物 すごい品種図鑑』(エクスナレッジ)等。

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