結婚できない!神主や僧侶が婚活で苦戦する事情 寺社仏閣の「格」の差が妨げになることも

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「それでも共働きが主流となった今は、神主のパートナーとなる人が、結婚後も自分の仕事を続けることに対しては寛容になっています。昔は神主と結婚すると専業主婦(夫)となり、神社の仕事にコミットするのが当然とされていましたが、私のところ(大井蔵王権現神社)も妻は外で働いています。

特に地方だと神社の運営だけでは食べていけないところもあり、平日は学校教師や公務員として働き、土日に神主の仕事をする人も少なくありません」

業界内の結婚は「しがらみ」が妨げになることも 

神社の後継者不足に歯止めがかからない中、養子縁組や事業承継などの取り組みを行い、なんとか次世代へつなごうと奮闘するところもある。

ただ、都心以上に深刻なのが地方で、閉鎖を余儀なくされる神社も少なくない。地方を訪れた際、荒れ果てた無人の神社を見かけたら、跡取り不在などの理由で閉鎖した可能性がある。

寺院では宗派内で婚活を推進する動きがある。しかし、寺院関係者が斡旋して成立した結婚がうまくいかず、紹介者の責任問題に発展して下火になった例もあったという。寺院関係者が関与する婚活では、どうしても寺院関係者が結婚相手候補となり、嫁ぎ先(寺院)との「格」の違いが問題になりやすいというのだ。

いったいどうしたらいいのか。ひとつの方法として考えられるのが婚活サービスの利用だろう。とはいえ独身神主や僧侶が婚活サービスの場で人気とは聞かない。そこで彼らと一般人との結婚に特化したサービスも誕生している。たとえば男女問わず神主や僧侶向けのサービスを開始した「寺社の縁結び」(ライフパートナー)。

利用料は僧侶や神主の場合、登録料3万3000円、月会費1万1000円、成婚料27万5000円、一般利用者の場合、登録料5500円、システム利用2200円(月額)、お見合い料1回5500円(消費税込み)と、大きな金額はなんとか結婚したい神主や僧侶側が持つ仕組みだ。利用料は寺社の存続を第一の目的としているため、とついでもらう側、とつぐ側ともに負担の少ない設定となっている。

「弊社の推計では25歳〜44歳で結婚願望のある神主と僧侶の人数は約5万人います。マッチングアプリを使う結婚希望者も中にはいますが、あくまでお付き合いする人探しで止まっており、結婚までには至らないことが多いようです。そんな状況を変えるサービスになればと思っています」(ライフパートナーの担当者)

はたして婚活難に直面する独身神主や僧侶の状況は改善するかどうか。「自由に生きたい」「しがらみに縛られたくない」と思う一般女性に、どうやってそうではないことをアピールできるか。当事者である独身神主・僧侶はもちろん、その家族の真摯な姿勢と努力がカギを握ることになりそうだ。

池田 園子 ライター、編集者

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いけだ そのこ / Sonoko Ikeda

編集プロダクション「プレスラボ」代表。1986年、岡山県生まれ。中央大学卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者・ライターに。その後「DRESS」編集長を務め、現職。持続可能なビジネスを行う企業や個人の取材を続けている。

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