結婚できない!神主や僧侶が婚活で苦戦する事情 寺社仏閣の「格」の差が妨げになることも

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特に今結婚に興味がある、結婚の意思を持つ若い人を20〜30代と考えると、その大半は核家族として生活してきて、地域の人々と深く関わって生きている人は少数派だろう。単身でマンション住まいともなると「隣近所」の概念はなく、隣室や上下階に住む人の顔を知らない生活を気楽に感じていたりする。

しかし、寺社仏閣の世界ではそうはいかない。例えば神社には氏神を信仰する氏子がおり、その代表である氏子総代を中心として神主に協力し、神社の祭祀や伝統の保持振興を支援する、いわば「コミュニティー」が存在する。神主と結婚した場合、氏子との濃密な関わりは確実に発生するのだ。

氏子は代々、氏子区域とされる土地内に住み、氏神を祀った神社を信仰し、尊崇の意を示している。長年にわたりその土地に根付いた人々で、特定の神社を崇敬しているからこそ見る目が厳しく、神主やその家族はつねに人目にさらされているともいえる。

夫婦共働きの神社も

「境内の掃除は行き届いているか、神主のパートナーは神社の仕事を適切に行っているのか、氏子や参拝者に対し常日頃から感じよく挨拶できるかなど、氏子さんはよく見ているものです。特に規模の大きな神社になるほど、多くの氏子さんや参拝者と接することになります。もし、それらができていないと、氏子さんからクレームが入るのは日常茶飯事です」

特に、神輿や山車を出すような祭り、屋根や鳥居など神社の建て替え工事などのビッグイベントの際には、氏子の協力が欠かせない。大きな予算がかかる場合、氏子の寄付がなければ祭りも工事も実現しないのだ。

吉井さんとつながりのある都内の某神社では、集会場を建て替える際にも必要額を、氏子総代の寄付(奉納)金額を基準に、ほかの氏子も本家はいくら、分家はいくらというように相談するという。このように、神社運営は氏子に依存する面もあり、神主やその家族には氏子に対してつねに気を遣うことが求められる。

また、来訪が多い人気のある神社であれば、社務所に常駐スタッフを配置する必要がある。御朱印や御守りの授与は無人ではできないからだ。10〜16時の間、箱詰めになるケースもある。規模の大きな神社であれば巫女を雇う余裕があるが、そうでなければ神主と家族で切り盛りするしかない。心と時間――神社運営には多くのリソースを捧げる必要があるのだ。

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