「結婚したい」と思ったことがなった
めぐみ(36歳、仮名)が婚活を始めたのは、今から半年前のことだった。大学を卒業後、大手企業に就職したのだが、学生時代も社会に出てからも、恋愛らしい恋愛を一度もしないまま歳を重ねていたという。
面談のときにこんなことを言っていた。
「これまで、結婚したいと思ったことがなかったんですよね。私が小学校のとき、親が離婚したんです。原因は父の暴力でした。家族で動物園や遊園地に行った記憶もあるんですが、それよりも鮮明に覚えているのは、母が父から殴られて泣いている姿です。私も殴られたことがあります。離婚後、母は実家に戻り、私は小学校を転校しました。それからは平和な毎日でした」
母は、めぐみを育てるためにフルタイムで働いていたが、家にはいつも祖父母がいたので、寂しくはなかったという。
「祖父は父とは正反対の性格で、キレて声を荒らげたり、暴力を振るったりする人ではありませんでした。昭和の人でしたが男尊女卑の考え方もなくて、ウチは手の空いている人が家事をする家風だったんです。だから、大学の合コンや会社の飲み会で、女性が率先して料理を取り分けたり、飲み物を作ったりしているのを見て、すごく違和感がありました。でも、そういう女性のほうがモテる。私はなんだかこびを売っているみたいで、それがすごく嫌でしたけど」
そもそも社交的なほうではなく、どちらかといえば大勢で集まる飲み会などは好きじゃなかった。街中でも、大声を出している男性がいるとビクッと反応してしまう。男性には苦手意識があって、恋愛をせずにここまできてしまった。
それが、なぜここに来て、結婚を真剣に考えるようになったのか。
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