宮本笑里「すぐに消えると言われた」彼女の現在地 スタッフやリスナーに支えられて迎えた15周年
――今日のファッションも黒ですね。
宮本:クラシックだと、エレガントなドレスというイメージが強いのかもしれませんが、普段のファッションは黒が基本です。個人的にはクールな格好のほうがしっくりきます。ただこんなに高いヒールは、演奏ができなくなってしまうので履きませんが(笑)。
――『classique deux』のアルバムジャケットも、これまでのイメージと違ってクールな印象です。
宮本:2018年にリリースした『classique』は、ドレスをまとってクラシック音楽のイメージをそのまま体現した感じに。今回はデビュー15周年記念ということもあり、自分自身のルーツというか、クラシックだけでなくポップスなどいろいろな音楽をミックスさせて表現活動をしていきたいという姿勢を、ヴィジュアルで表現したかったのです。
クラシックは、テクニック以上に「個性」が求められる
――本作は、ヴァイオリン小品集『classique』の第2弾ですよね。
宮本:今回のレコーディングは、実際のコンサートホールを貸し切って3日間にわたって制作しました。通常はスタジオに何回も通って、じっくり時間をかけて完成させるのですが、3日間ヴァイオリンを弾きっぱなし。
しかも、クラシックの特性上、スタジオ録音のような細かい編集ができないので、失敗したらもう一度やり直しという緊張感のあるものでした。でも、音響のすばらしいホールなので、ストレスなく楽しく演奏することができました。
――ホールでの一発録りなんですね。
宮本:ポップスだと、あとで編集をしてもすんなり耳に入ることが多いのですが、クラシックの特にホールでのレコーディングに関しては自然と空気感が出るので、あとで手を加えると、楽曲の世界が途切れてしまうのです。
――演奏している楽曲は、平原綾香さんの「Jupiter」の原曲としても知られる「ホルスト:木星」を筆頭に、聴きなじみのあるクラシックばかりです。
宮本:前作でも誰もが耳にしたことのあるクラシックをセレクトしたのですが、本作は、前作で収録できなかった、私の大好きな楽曲を選びました。「あ、この曲聴いたことがある」と気づくきっかけになればいいですね。
――誰もが聴いたことのある楽曲を演奏するのは難しいですか?
宮本:クラシック音楽の演奏に「楽」という言葉はなくて。多くの方に長年愛され、また演奏されている楽曲ゆえに、弾いていると自然にプレーヤーのパーソナルが伝わってしまう。この人は普段どんなことを考えて、この楽曲や音楽に取り組んでいるのかが、浮き彫りになってしまうのです。
だから、1つも手を抜けないフレーズばかり。ただ、それがクラシックを演奏する醍醐味なのですが。