史上初の無観客開催となった昨年大みそかのNHK紅白歌合戦(以下「2020年紅白」)は、第2部の視聴率が40.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、2年ぶりに40%台に回復。一応の成功を見たようだ。
「無観客紅白」ということで、2020年紅白には、いくつかの新しい取り組みが見られた。今回は、昭和の時代から紅白を見つめ続けた54歳のロートル紅白ファン(=私)による、新しい取り組みへの率直な感想を踏まえつつ、その先にある、今後の紅白のあるべき姿を考えてみたいと思う。
2020年紅白について、私が開始早々に抱いた感想は「観客の存在って、こんなに大きかったのか」というものだった。
絵面(えづら)や進行が、妙に淡々としていて、従来の紅白が持っていた独特の熱気が、決定的に欠けていると思ったのだ。
「ライブ感」が足りない理由
無観客になったことに加え、「密」を避ける目的もあって「NHKホール」「101スタジオ」「オーケストラスタジオ」という3会場に出演者が分散したことや、そもそも冒頭で出演者が全員集合しなかったことも、熱気を削ぐ要因となった。また、細かな話だが、NHKホールの舞台が、客席側に広げられていたことも、視覚的な「空虚感」を高めたと思う。
結果、一視聴者としては、NHK『SONGS』や、民放のゴージャス系音楽番組(『FNS歌謡祭』など)を見ているような印象を受けた。言い換えれば「ライブ感」が足りない、収録済みの「完パケ」映像が、ずっと続いているという感じ。
そんな印象に拍車をかけたのは、(これは今に始まったことではなく、平成の紅白で段階的に増えてきたのだが)「カラオケ」(バックが生演奏ではなく録音済み演奏)や、「口パク」の増加である。また、2020年紅白における「紅白 ディズニースペシャルメドレー」のような、収録済み「完パケ」パートが挟まれることも、最近の紅白では散見される。
「カラオケ・口パク・完パケ」を一概に否定するわけではないが、それでも、昭和の「生演奏・生歌・生放送」の(「3密」ならぬ)「3生」の紅白を今でもこよなく愛する私は、その「ライブ感」の欠如から、とくに第1部について、正直、乗り切れなかったのだ(実際、第1部の視聴率は34.2%で、2019年紅白より微減)。
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