「俺の家の話」クドカン歴代ドラマと決定的な差 「小ネタ」を抑えてシリアスなテーマを描く

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『俺の家の話』は親の介護や相続問題などを描いている(東洋経済オンライン編集部撮影)

宮藤官九郎脚本のドラマ『俺の家の話』(TBS系)が、初回の世帯平均視聴率11.5%(ビデオリサーチ/関東地区)を記録、第2話は9.7%と少し下がったものの、好発進したと言えるだろう。

視聴した方は感じたと思うが、『俺の家の話』は、これまでのいわゆる「クドカンドラマ」とは、ちょっと様子が異なるのだ。というわけで今回は、「シン・クドカンドラマ」としての『俺の家の話』の魅力を探ってみたいと思う。

クドカンドラマが「普通」に?

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これまでの「クドカンドラマ」と差異を感じるのは、第1に、ストーリーの展開が比較的緩やかで、プロットがシンプルという点だ。

逆に、展開がとても忙しかったのが、2019年の大河ドラマ『いだてん』である。本連載の『大河「いだてん」からそれでも目が離せない理由』で私は、そのストーリーを「画面からあふれ出す情報の洪水」と表現したほどだ。

また、TBS×宮藤官九郎の前回作となる『監獄のお姫さま』(2017年)も、とても複雑・濃密な展開で、『いだてん』同様、ちょっとスマホに目を移したら、展開に追いつけなくなりそうな感じがした記憶がある。

対して、『俺の家の話』は、通常のドラマ並みのスピードで展開し、画面をまなじり決して睨み付けていなくとも、普通に楽しめる感じがする。

第2の差異は、宮藤官九郎一流の「小ネタ」が乏しいこと。例えばNHK朝ドラ『あまちゃん』(2013年)などは、ストーリーそのものよりも、その端々に出てくる「小ネタ」のほうに目が奪われたものだが、『俺の家の話』では、今のところ、長州力本人による「切れてない」というせりふが印象に残る程度だ。

さらに、細かな話になるが、タイトル『俺の家の話』の語感が普通で、『池袋ウエストゲートパーク』『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』などなど、過去のTBS×宮藤官九郎のタイトルが備えていた、ものものしくにぎやかな感じがない。

と書くと、『俺の家の話』未視聴の方は、「いよいよクドカンドラマも、普通のドラマになっちゃったか」と思われるかもしれない。確かに、そういう印象もなくはないのだが、その分、これまでの「クドカンドラマ」にはなかった(弱かった)新しい要素が加わっていて、そこが最大のポイントだと思うのだ。

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