このクールの話題をさらっているドラマと言えば、TBS『半沢直樹』をおいて、ほかにはない。視聴率も、安定的に20%(ビデオリサーチ、関東地区)を超える驚異の人気を誇っている。
ただ私が注目して追っているのは『半沢直樹』ではない2つのTBSドラマ、『私の家政夫ナギサさん』(TBS系、毎週火曜よる10時〜、2020年7月7日スタート)と『MIU404(ミュウ ヨンマルヨン)』(TBS系、毎週金曜よる10時〜、2020年6月26日スタート)だ。
このうち、前者『私の家政夫ナギサさん』の視聴率が、予想外に(失礼)好調に推移したのだ。第1話が14.2%で、第2話から12・8%→12・7%→12・4%とややモタつくも、第5話で14.4%、第6話で16.0%、第7話で16.6%、そして第8話は16.7 %と、最終回を前にぐんぐん伸ばしてきた。
今回は、最終回を間近に控えたこのタイミングで、『私の家政夫ナギサさん』の成功要因を探ってみたいと思う。
「何も考えず気楽に見たい」テレビドラマの需要に合致
『私の家政夫ナギサさん』と『MIU404』、これらの「視聴感」はまったく異なる。正反対といっていい。
展開が非常に複雑で、視聴者に過度な集中を要求するのが『MIU404』(と書くと否定的に捉えているように聴こえそうだが、『いだてん』の宮藤官九郎同様に、脚本家・野木亜紀子の緻密な構成力を称賛したいと思っている)。
対して『私の家政夫ナギサさん』、略して「わたナギ」は、その略称の響き同様に(一見)「お気楽」に見られるドラマで、視聴ストレスはほぼ皆無のように感じる。いくつかのドラマ評にあるように、この作品には悪役が出てこない。
また、いろいろとストレスはあるものの、主人公・相原メイ(多部未華子)は根本的に「リア充」である。製薬会社のMRとして若くして出世し、複数のイケメンにも言い寄られる。また周囲も、それを応援しているという実にほんわかとした設定。さらには家に帰ると、「スーパー家政夫」のナギサさん(大森南朋、好演)が家事から雑事まですべてこなしてくれる。
この「お気楽感」=「ま、色々あるけれど基本、万事うまく進んでいる」ことを追う視聴ストレスのなさが成功要因の1つだろう。コロナ禍において、日々緊張感を強いられる生活の中、「ドラマくらいは、何も考えず楽しく視聴したい」という心情に、すっぽりとハマっている感じがする。
また、作り込まれた洋画などを流すNetflix (ネットフリックス)などの動画配信サービスと競合する格好になっている地上波には、その無料という特長とひも付いた「お気楽」需要に応えることが、今後重要になっていくのかもしれないとも思う。
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