「家政夫ナギサさん」お気楽の陰に見えた切実さ 働く女性に現実の真逆としてリア充が必要な訳

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「お気楽」と連呼すると、「軽薄で見応えのないドラマか」と思われるかもしれないがそんなことはない。女優・多部未華子が真ん中に堂々と君臨し、ドラマ全体の魅力を底上げしている。ここが、2つ目の成功要因として指摘したいポイントである。

私が多部未華子に注目したきっかけは、2012年に放送されたTBSドラマ『浪花少年探偵団』だ。大阪の下町の小学校教師を多部未華子が演じるのだが、ここでの演技、とくに大阪弁のセリフ回しが、非常に優秀だった(多部は東京都出身)。

筆者含む大阪出身者の多くは、ドラマの中の大阪弁の出来不出来に敏感である。多部未華子のしゃべる大阪弁の見事さには、彼女の「芸能IQ」の高さを感じた。この点、川栄李奈の見事な大阪弁にも同様の感想を抱いたことがある(「川栄李奈が「CM女王」以上の女王になる希望」2018年6月15日参照)。

厳しい時世を反映した「清潔派」女優の魅力

そして何といっても、昨年のNHK『これは経費で落ちません!』。有能で、潔癖で、それでもほんの少し人間味のある経理部員という、実に難しい役回りを完璧に演じていた。途中からは、その経理部員と多部未華子が同一化、「これは多部未華子の地なのではないか」と思い始めたほどである。

昭和の時代だと、多部未華子は吉永小百合のように「清純派」と呼ばれただろう。で、竹下景子のように「息子の嫁にしたい女優No.1」と言われて、映画『男はつらいよ』のマドンナになっただろうと想像する。

ただ多部未華子の場合、高度経済成長期とは対極的な厳しい時世を反映してか、「清純派」というフワッとした感じよりは、その根本に力強さ、生命力のようなものが満ちている感じがする。あえて言い換えれば「清潔派」。この「清潔」の「潔」は「潔(いさぎよ)さ」の「潔」であり、「潔癖」「高潔」の「潔」だ。つまり、汚(けが)れなく、まっすぐ生きるチカラに満ちているイメージ。

いま女優界で、このポジションは非常に貴重だと思う。唯一無二だともいえよう。そんな多部未華子の「清潔」な魅力が、このドラマの魅力を底上げしている。TBSの火曜22時に、清潔な風が吹いている。

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