「続く咳=コロナ後遺症」に医師が異を唱えるワケ 真の「後遺症」は訴えの半数、驚きの最新研究

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また、「後遺症の症状は、感染・発症した際から続く場合もあれば、いったん治った後に新たに発症することもある。時間の経過とともに症状が変わったり、再発したりする可能性もある。感染時の重症度と後遺症の発症いかんには関連性もない」としている。

こうしたWHOの見解は、診療現場の肌感覚ともおおむね合致する。

ただ、この“定義”は、エビデンスの十分な蓄積によって得られたものではない。あくまで2021年10月時点のごく限られた情報に基づき、数百人の専門家・患者・利害関係者の協議によって合意に達したものだ。

もっと言えば、新型コロナの後遺症に関しては本来、以下2点を把握したうえで、有病率や重症度の計算に修正を加え、補正データをもとにその実態や性質を解明していかねばらない。

① 新型コロナ以前に、同じ症状・疾患を持つ人がその集団にどれだけ存在したか

② 新型コロナ未感染の集団に、同じ症状・疾患を持つ人がどれだけ存在するか

これらのデータを備えた信憑性の高い研究は、これまで存在しなかった。WHOの“定義”も、そうした研究をベースにしたものではない、ということだ。

「後遺症」と診断できるような特有の症状はない

日本国内では2022年5月、有識者らによって「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」の別冊として「罹患後症状のマネジメント(第1版)」が作成されたが、ここでもWHOの“定義”を引用しているにすぎない。

また、「本手引きの目的と限界」でも「(後遺症は)除外診断であることに留意する」と明示している。除外診断とは、問題の症状がほかの疾患によるものではないと排除していった結果の診断で、要するに消去法だ。

言い換えると、「この症状は後遺症です」と診断できるような特有の症状や検査方法はない、ということだ。

8月6日、コロナ罹患前後および陽性者・陰性者について比較対照群を用いてデータ補正を行った大規模研究が、世界で初めてオランダから発表された。世界5大医学誌の1つ『Lancet』誌に掲載された。

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