「続く咳=コロナ後遺症」に医師が異を唱えるワケ 真の「後遺症」は訴えの半数、驚きの最新研究

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もちろん診断は個別具体的に行うものなので、絶対というわけではない。

だが咳が長期間続いてしまうことは、あらゆる呼吸器感染症の後に非常によく見られる。風邪の後に咳だけが残ってしまった、という経験のある人は少なくないだろう。新型コロナに特異的なものではないのだ。

だから、ごく軽症だった新型コロナ患者さんが軽い咳をしながら「コロナ保険の認定のため」に後遺症の診断を求めてきたとき、どうしても複雑な気分になる。

そんなときこそ拠るべきは、エビデンスだ。ところが、新型コロナ後遺症についてはまだ、科学的に信頼に足るエビデンスがほとんど出てきていないのだ。

WHOによる「定義」に決定的に欠けているもの

拠るべき“定義”がないわけではない。世界保健機関(WHO)は2021年10月、コロナ後遺症(ロングコビッド)に関する「合意による定義」を発表した。

それによると、コロナ後遺症は「新型コロナの感染から3カ月以内に発症し、最低2カ月続く、新型コロナ以外に説明のつかない症状」であり、「日常生活(仕事や家事)に影響を与える可能性がある」ものをいう。主な症状として以下の例が挙げられている。

● 倦怠感
● 息切れ、呼吸困難
● 記憶障害、集中力の欠如、睡眠障害
● しつこい咳
● 胸痛
● 言語障害
● 筋肉痛
● 嗅覚・味覚異常
● うつ病、不安神経症
● 発熱

新型コロナ患者の「10~20%」が後遺症に見舞われるが、その診断は通常、「感染もしくは回復から3カ月後の時点で判断する」。

次ページエビデンスの十分な蓄積によって得られたものではない
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