もうからないものは断るべきとの流れがある一方、利益を度外視してでも取り組まなければならないとの思いを持った人がいて、復原を一手に引き受ける「ものづくり工房」というプロジェクトが2006年に立ち上がりました。私もそのスタッフとして携わることになりました。東京駅にかかわりはじめたのもこの年からです。
反対意見の上司がいても企画を通す!
──2007年には帝国ホテル旧本館(1923〜1968)に関する企画展を開催しています。INAXのルーツでもある建物で、建設当時の話はNHKドラマ『黄色い煉瓦~フランク・ロイド・ライトを騙した男』にもなりました。どうしてこのテーマを取り上げようと思ったのでしょうか。
2006年にものづくり工房に70歳すぎの職人がいました。帝国ホテル旧本館で使われていたテラコッタを一生懸命作っているので、何をしているのか聞くと、昔仕事で再現したことがあるもので、自分の勉強のためにライフワークとして作っていると言うんです。こんな素晴らしいことはもっとアピールしたほうがいいと思いました。そこから建設当時の資料を読み込んでいったら、非常に面白い話だったんです。
INAXのルーツではあるのですが、会社としてはあまり思い入れがありませんでした。
当時は「『昔はよかった』と懐古するのは会社が傾いてきたときだ。ノスタルジーを感じだしたら終わりだ」と反対もされました。
ですが、実際に展覧会が始まると、営業の人たちが見に来てくれて、みんな感動するんです。それで改めてその価値を認識しました。
──反対意見があってもやり通したということですよね。うまく話を通すための秘訣はあるのでしょうか?
東京駅でも「もうからないことをしてどうするんだ」と反対した上司もいました。それも正しい意見です。でも、それならばほかの上司を動かすにはどうすればいいかを考え行動しました。
味方になってくれた上司には今でも感謝しています。あとは「やって結果を残せ」です。お金にはあまりなっていませんが、そういう意味で、認めてもらえていたのは幸せな会社人生だったと思います。
──それでは最後に。後藤さんにとって「タイルの魅力」とは何ですか?
色があせないことです。色だけではなく職人の思いも残ります。
エジプトのタイルだって4000年前に何かを思って作った人が必ずいるわけです。
それを解き明かすと「宝石のように飾り立てたいと思ったのでは」と推測ではあるけれど、当時の思いが読み解けます。どういう人が、どういう思いで作り、どう使っていたのかを考えられるのがタイルの魅力だろうと思います。
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