「東京駅舎の赤いタイル」復原した男のすごい人生 担当には早稲田大学大隈講堂など名建築がズラリ

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──後藤さん自身、JR東からの指示書を読むだけではなく、創建当時のことを調べたんですか?

なぜ、色、テクスチャー、角の鋭利さなど、ここまでのこだわりが要求されるのかが知りたくなり、周辺のストーリーを調査しました。創建当時の設計者である辰野金吾は「西洋に負けない日本オリジナルの駅を作れ」との使命を与えられていました。その記録を見つけたときに腑に落ちたんです。

東京駅丸の内駅舎の化粧レンガ。きめの細かい表面とピン角と呼ばれるエッジが特徴(写真:筆者撮影)
復原工事に採用された化粧レンガ。「明るい赤色」の再現を追求した(写真:筆者撮影)

レンガはもともと西洋の技術です。それに負けない赤レンガを作るためには、化粧レンガという新しい素材を貼り付けるしかなかった。だからこそ辰野金吾はこだわった。今回の復原には、そのこだわりを出さなくてはいけないのだと理解しました。

形や色を再現するだけが本当の復原なのかと思うんです。それよりもむしろ「何のためにやったか」「創建当時、どんな思いが込められたのか」が重要なのだろうと思います。

「古代エジプトピラミッドのタイル」の面白さ

──後藤さんは現在、INAXライブミュージアム(愛知県常滑市)の主任学芸員です。ミュージアム内の「世界のタイル博物館」にはジェセル王ピラミッドの地下通路の壁面に飾られていたタイルが展示されています。これの再現をキッカケにすっかりハマってしまったとか。なぜ、そのような取り組みをすることになったのですか。

エジプトのタイルの再現品。「世界のタイル博物館」に展示されている(写真:筆者撮影)

1997年に「世界のタイル博物館」をオープンするにあたって、展示するだけでいいのかとの議論が社内で持ち上がりました。技術をきちんと解明することも博物館の役割だろうということで、技術開発部の私のところに降りてきました。

次ページ分析だけでは学術的にも中途半端と、再現までした
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