「東京駅舎の赤いタイル」復原した男のすごい人生 担当には早稲田大学大隈講堂など名建築がズラリ

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当初の目的は、どんなものか分析をして製法を推定するところまででした。ただ、それだけでは学術的にも中途半端なので再現までしました。

世界最古といわれるエジプトのタイル。「世界のタイル博物館」に展示されている(写真:筆者撮影)

──論文を拝見すると、原料は砂漠の砂で、ミイラ作成に使う素材を使い、トルコ石の切削粉で色を出すなど、古代エジプトを知らないとたどり着けないような仮説です。以前から好きな分野だったのでしょうか?

まったく興味ありませんでした。仮説を立てるためにかなり調べ、それでハマりました。

首の装飾部分に青色の古代エジプト特有の焼き物が使われている(写真:JK21/PIXTA)

調査後に「ここまでして立証したんだから、エジプトに行って確かめないといけないでしょう」と出張を申し出たのですが、許可してもらえず、休暇だけをもらって自費で行きました。

そしたらツタンカーメンに同じ焼き物が使われていたんです。まるで宝石のようでした。装飾目的で用いられていたのだろうと確信しました。

エジプトというタイルの原点を見たことで、次はイスラム、その次はモロッコ、スペインと拡散の歴史を追いかける形で世界を回りたいという意識が芽生えました。今までに20カ国ほど旅をしています。

昔は、復原は当たり前の技術だったはずが・・・

──タイルにそんな長い歴史があったとは……。お仕事のほうは、そこから復原担当になっていくのでしょうか。

そうでもなくて、製造の仕事に携わるようになりました。そこでは新しいタイルを開発する一方で、復原の話もときどき舞い込んできていました。

そもそも昔は復原というか補修は当たり前の技術でした。補修するとなれば50年前のものでも工場が再現して納材していたんです。ところが費用がかかるものなので、だんだんと重荷になっていました。

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