小池さんは浮気相手の妊娠がわかり、離婚と再婚に焦っていたのだ。ならば真紀子さんに事実を率直に打ち明けて頭を深く下げれば、もっと早くに離婚ができていたかもしれない。真紀子さんから決定的に失望されることもなかっただろう。肝心なときに勇気も優しさも誠実さも発揮できないと、人間関係や人生を棄損してしまうという戒めである。
「友達からは『そんな男は許せない。慰謝料をとるべきだよ!』とすごく言われました。でも、一度は好きになって結婚した人を、そこまで憎むことをしたくありません。誰かを憎み続けると自分もつらくなりますから。だからといってあの人の幸せを願う気持ちにもなれませんよ。私の知らないところで勝手に生きていってほしいです」
僕も円満とはまったく言えない離婚体験をしているので、真紀子さんの友人たちに言っておきたい。ひどくつらい状況にある人に対して、感情に任せた勇ましい言葉は有害無益である。
もし本当に友人を守りたいと思うのならば、怒りや悲しみを黙って聞いて辛抱強く寄り添うか、資金面(お見舞金を渡す、おいしい食事をごちそうする、など)や実務面(引っ越しを手伝う、離婚調停が得意な弁護士を紹介する、など)でサポートをするべきだ。痛みを分かち合うつもりがないのなら、中途半端な助言はしないでほしい。
12歳年下の男性と恋に落ちるまで
つい熱くなってしまった。ビールから焼酎お湯割りに切り替えて、真紀子さんの再婚ストーリーを聞くことにしたい。
苦すぎる離婚を済ませ、独身生活を過ごしていた中央線沿いの町に戻ってきた真紀子さん。1年後には、イタリアへの7カ月間の短期留学を決行する。「人生でこんなに楽しい時間はない」と感じるほどの日々だったようだ。晴れやかな気持ちで帰国した後は、さらなる幸運に恵まれた。
「私はあまりお酒が飲めないのですが、ノンアルコールカクテルでも嫌がらずに作ってくれるバーを町の友人に教えてもらって、ときどき通っていました。今の夫とはその店で知り合ったのです。バーのマスターも交えて町のおいしい店について話していたら楽しくて、友達になれそうだなと思いました」
現在の夫である原田剛さん(仮名、33歳)との出会いである。なんと12歳年下だ。初対面から年齢を明かし合ったわけではないが、見るからに若いので男性としては意識しなかった。
「会社の名刺をくれたのでメールをしたら、食事に誘われました。地元の焼き鳥屋さんです。読んでいる本から休日の過ごし方まで、ますます気が合う!と盛り上がりました」
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