「再婚した今になってから考えてみると、一緒に暮らす相手としては性格が合わなかったのだと思います。私は言葉一つひとつに気をつかわなければいけなかったし、向こうは向こうで窮屈な思いをしていたのでしょう。当時は気づきませんでしたが、別れた後でずいぶん変な生活だったのだと気づきました」
離婚騒動でわかった、夫の思いがけない一面
「小池さん」でも「彼」でもなく、「向こう」と呼ぶところに真紀子さんの微妙な心理状況がうかがえる。彰さんはそれだけ不誠実な離婚のやり方をしたのであるが、それについては後述する。言葉一つひとつに気をつかう、とは具体的にどういう生活なのだろうか。
「たとえば、『先輩俳優にこんなことを言われた。ふざけやがって』と家の中でずっと愚痴をこぼしていたとします。私が『先輩はそういう意味で言ったんじゃないんじゃない?』となだめようとしても、『お前はあいつの味方なのか!』と火に油を注ぐことになってしまう。付き合っているときはそういう気難しさも含めて好きでした。結婚して一緒に暮らせば、わかり合えると思ったのが間違いでしたね……」
役者ほどではないが不安定なフリーランサー男性である僕には、真紀子さんではなく彰さんの気持ちが少しわかる。仕事がうまくいかないとき、親しい女性には全面的に味方になってほしいし、励ましてもらいたいのだ。でも、それは子どもっぽい甘えにすぎないことも頭ではわかる。いずれは「卑屈で面倒くさい甲斐性なし」と見放されても仕方ない。
信じられないことに、離婚を切り出したのは彰さんのほうだった。今までの結婚生活でいかにつらい思いをしてきたか、そして真紀子さんのことがどれぐらい嫌いかを急に言い募るようになった。
「気に入らないところがあれば直すからと言ったのですが、話し合いになりませんでした。ほかに好きな人がいるのと聞いたら、『いる。その人とだったら結婚生活もうまくいくと思う』と答えられてしまいました」
彰さんの非道は浮気や身勝手にとどまらない。ちょうどその頃、地方にいる真紀子さんの母親が急病で入院してしまい、生死の瀬戸際をさまよっていた。地元に戻って付き添っていてあげたい真紀子さんは、離婚するか否かなどを考えている場合ではない。
「でも、向こうは『早く離婚してくれ。1カ月も待っていられない。書類を早く出してくれ』の一点張り。話すたびに失望することに疲れてしまい、さっさと離婚することにしました。後になってから人づてに聞いたのですが、秋に私と離婚して、その冬には再婚相手との間に子どもが生まれたそうです」
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