世界で爆ヒット「XG」を生んだエイベックスの苦節 韓国エンタメを徹底分析、「強いIP」を再び模索

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冒頭に挙げているアーティスト育成に関しては、新たな育成機関「avex Youth」を2022年7月に立ち上げた。「世界基準のヒットを作れるような環境をわれわれが提供していく」(黒岩氏)といい、単に歌やダンスを磨くだけでなく、海外でも愛されるための必須要件である語学や文化的背景も身につけられるよう、留学プログラムなども用意する。

avex Youthのもう一つの特徴は、「出口戦略」を明確にしたプロジェクト形式で運営する点だ。

avex Youthに先立って約5年前に開始し、XGを輩出した「XGALX」プロジェクトは、「ダンス&ボーカル × グローバル」というコンセプトで活躍できるよう、初期から方向性を明確にして育成に取り組んできたという。今後は同様の手法で複数のアーティストを展開していきたい考えだ。

継続的にヒットを出せるか

XGを見ても、エイベックスが「出口戦略」を重視していることがうかがえる。顕著なのが、海外、とりわけK-POPを強く意識している点だ。

プロデューサーは韓国を中心に音楽活動を展開してきたSIMON(サイモン)氏が務めており、歌やダンスなどのレッスンにおいても、”韓国式”を多く取り入れたという。さらに「MASCARA」のリリース翌日からは立て続けに韓国の音楽番組に出演。前述のとおり、SNSの公式アカウントの発信も英語、韓国語を中心に行っている。

中計の達成に向けて、自社アーティスト育成の重要性を強調する黒岩社長(撮影:梅谷秀司)

「すべて韓国をまねするというのではないが、研究して、いいところを取り入れたい。エイベックスはアメリカ・ロサンゼルスにもスタジオを持っており、現地の要素を取り入れながら、日本的なオリジナリティを持ったアーティスト・作品を出していけるのが理想だ」(黒岩氏)

ただし、黒岩社長自身もこうしたプロジェクト形式のアーティスト育成について、「未知の領域なので、(すべてがヒットする)確信はない」と話す。XGもスタートダッシュは切れたものの、今後世界的なヒット曲を継続的に出せるか、エイベックスの業績にプラスに貢献するかは未知数だ。

一方で黒岩社長は、「韓国のエンタメ企業のように、日本からもアジア市場、世界市場に打って出るアーティストを作っていきたい」と意気込む。日本のエンタメ業界の老舗は、再び存在感を高めることができるか。

黒岩社長のインタビュー記事:エイベックスは「全盛期の輝き」をどう取り戻すか

髙岡 健太 東洋経済 記者

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たかおか けんた / Kenta Takaoka

宮崎県出身。九州大学経済学部卒。在学中にドイツ・ホーエンハイム大学に留学。エンタメ業界担当を経て、現在はM&Aや金融業界担当。MMTなどマクロ経済に関心。

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