世界で爆ヒット「XG」を生んだエイベックスの苦節 韓国エンタメを徹底分析、「強いIP」を再び模索

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エイベックスの直近2022年3月期(2021年度)の業績は、売上高が約984億円、営業利益が約26億円だった。前期比では2割以上の増収だが、これはライブ興業などに新型コロナの影響が直撃し創業来初の営業赤字を計上した2020年度よりはましだった、というのにすぎない。コロナ以前の売り上げ規模を踏まえれば、回復はまだ道半ばだ。

ただ、業績推移でより注目したいのはコロナ以前だ。売上高は2014年度をピークに、その後は数年にわたり横ばい状態が続いていた。営業利益のピークはさらにさかのぼって2012年度で、その後は多少のでこぼこがあるものの、総じて下降線をたどっている。

エイベックスの創業は1988年。輸入レコードの卸販売が祖業で、1990年に町田にスタジオを開設するとともに自社レーベル「avex trax」を設立した。その後、TRFや安室奈美恵、globe、Every Little Thingなどヒットアーティストを次々と輩出した。1990年代のエイベックスは、まさに破竹の勢いだった。

2000年代に入ると、CD-R(データ書き込みが可能なCD)や音楽配信の普及により、主力だったCD販売に陰りが見え始める。だが、浜崎あゆみや倖田來未、大塚愛など、所属アーティストの人気が下支えし、売り上げの伸びは続いた。

「貯金」に頼っていた反省

その後もライブ事業などを原動力に業容を拡大したエイベックスだが、東方神起が一時的に活動を休止した2015年ごろから、足踏み感が出始める。そして2018年には、「平成の歌姫」として長年活躍した安室奈美恵が引退を発表。さらに現在はコロナ禍、AAA(トリプルエー)の活動休止など、新たな打撃も重なる。

「1990年代から2000年代にかけ、当社には非常に多くの“貯金”があり、(経営上は)それをこなしていけばいいんだという時期があった。気づいてみると、われわれがゼロから何かを作っていくというのが、会社ごとになっていなかった感がある」

エイベックスの黒岩克巳社長は東洋経済の取材に対し、近年の不振についてそう反省を語る(詳細は黒岩社長のインタビュー記事:エイベックスは「全盛期の輝き」をどう取り戻すか)。

5月に発表した中期経営計画でIPの発掘・育成に重点を置いたのはこのためだ。主要施策では、今後5年間でアーティストのほか、フェス・イベント、アニメ関連のIP創出に250億円を投入することを明記している。

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