エイベックスは「全盛期の輝き」をどう取り戻すか 黒岩社長を直撃「世界で戦えるIPを全力で育成」
解散、休止、引退は「宿命」
――コロナ禍が襲う前の時点で、業績はすでに踊り場となっていました。現在、エイベックスは会社としてどのようなフェーズにありますか。
僕は今50代だが、同年代の人たちにとってのエイベックスは「1990年代のエイベックス」。当時はCDが全盛期で、国内マーケットが非常に大きい一方、人々が音楽に触れるチャネルは非常に限定されていた。ある意味、その時の成功は強烈すぎた。
今の20代、Z世代は(スマートフォンなどの)デバイスを使った音楽消費が当たり前になり、しかもそのデバイスを通じてグローバルに情報を共有し合える。音楽のビジネスでも、国内のオリコンで何位を取るかや、CDを何枚売るかではなく、非常に本質的なところが求められる。
昨今の韓国のエンタメ企業はそういった面をよく見て、戦略を打ち出したのが非常に早かったこともあり、世界的なヒットを連発している。同じアジアの国でも、日本はこの20年間、当社も含め、マーケットに対して内向きだったと感じる。
――安室奈美恵やAAA(トリプルエー)など、エイベックスを支えてきたアーティストの活動休止が相次いでいます。
アーティストは人なので、当然歳を取る。解散や活動休止、引退などがあるたび「大丈夫ですか?」と聞かれるが、それはわれわれの宿命。だからこそ、また新しいサイクルを回していかないといけない。
そういう意味で、1990年代から2000年代にかけ、当社には非常に多くの“貯金”があり、(経営上は)それをこなしていけばいいんだという時期があった。気づいてみると、われわれがゼロから何かを作っていくというのが、会社ごとになっていなかった感がある。
コロナ禍でいろんな壁にぶち当たっている間に、エンタメ業界では「IP(知的財産)×グローバル×テクノロジー」が世界共通のルールになった。今後は韓国のように、日本もアジア市場、世界市場に打って出られるアーティストを作っていかなければと思っている。