エイベックスは「全盛期の輝き」をどう取り戻すか 黒岩社長を直撃「世界で戦えるIPを全力で育成」

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――5月に発表した中期経営計画ではIP創出のために250億円を投じると掲げています。具体的にどのように投資していきますか。

まずはアーティスト輩出のための発掘・育成にお金をかけるが、デビューした後もいろいろな展開をしなければいけない。

例えば、世界で売っていくためにはデジタル映像にお金をかけて、多くのコンテンツを制作する必要がある。例えばK-POPには、年間で3000程度のコンテンツ(動画、画像など)をSNSにアップするアーティストがいる一方、日本のアーティストはコンテンツ量が少ない。

また、ロサンゼルスにあるavex USAにCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)機能をつけて、新しい技術に投資をしていく。先に述べたとおり、エンタメ業界においてはテクノロジーの活用がヒットの必須条件になっている時代だ。

加えて、現地でのマネジメントにも事業を拡大していくつもりでいる。

松浦会長の意志はずっとあり続けるが

――先日、松浦勝人会長の女性蔑視発言などが問題視されました。

黒岩克巳(くろいわ・かつみ)/1972年生まれ。2001年、アクシヴ(現:エイベックス・マネジメント)入社。エイベックス・ライヴ・クリエイティブ(現:エイベックス・エンタテインメント)社長などを経て、2017年に当社グループ執行役員就任。2018年に当社社長COO(最高執行責任者)就任。2020年から現職(撮影:梅谷秀司)

今回の件については、上場企業の会長としてさすがにちょっとと思う部分もあり、関係各所をお騒がせしてしまって申し訳ない気持ちだ。

――世間的には「エイベックス=松浦会長」というイメージが依然として強くあります。持続的な成長に向けて、会長と社長の役割分担や今後の経営体制についてどう考えますか。

創業者でありカリスマの松浦さんという存在は、今後もずっとあり続けるだろう。アップルにスティーブ・ジョブズの意志が今なお息づいているように、経営的な因果関係がなくなっても、この世からいなくなっても、エイベックスには松浦さんの存在が残り続ける。

だが、松浦さんがいなければ会社が回らない、という段階では、すでにない。経営全般において何かを決断したり、大きくお金をつけたり、私の社長としての役割はあるが、今走っているいろいろなプロジェクトも基本は現場の責任者がきっちり遂行している。

自分が目指すのは、適材適所で各社員が自走して、新しいものが勝手に次々と生まれてくる会社。自分の役割が終わる時までに、会長や社長を通さなくても何でもできる、より強い組織をつくりたい。

エイベックスの中期経営計画関連記事:世界で爆ヒット「XG」を生んだエイベックスの苦節

髙岡 健太 東洋経済 記者

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たかおか けんた / Kenta Takaoka

宮崎県出身。九州大学経済学部卒。在学中にドイツ・ホーエンハイム大学に留学。エンタメ業界担当を経て、現在はM&Aや金融業界担当。MMTなどマクロ経済に関心。

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長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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