エイベックスは「全盛期の輝き」をどう取り戻すか 黒岩社長を直撃「世界で戦えるIPを全力で育成」

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――「韓国式」では何が「日本式」と違うのでしょう。

(韓国式は)まず圧倒的に厳しい。また細かい点だが、例えば日本と韓国のボイストレーナーの考え方も全然違う。日本では腹から声を出せという教え方をする人が多いが、韓国式は喉で歌う。そのほうが重くならない。どちらがいい・悪いではなく、今はそういうトレンドだということ。

ダンスについても、日本は皆で並んでピタッと同じ動きを踊るような型が好きだが、韓国はフリースタイルの部分も多く、そろえるところはそろえてメリハリをつける。アドリブで踊るのにはセンスが問われ、育ってきた環境や哲学が大きく影響する。たとえ才能があっても、日本でずっとやっているアーティストでは達しえない領域があると思う。

ユニバーサルやソニーとは少し違うDNA

――学ぶべき要素はいろいろな部分にあるのですね。

すべて韓国をまねするというのではないが、研究して、いいところを取り入れたい。エイベックスはアメリカ・ロサンゼルスにもスタジオを持っており、現地の要素を取り入れながら、日本的なオリジナリティを持ったアーティスト・作品を出していけるのが理想だ。

BTSが「防弾少年団」として、(エイベックスが開催する野外イベント)a-nationに出ていたころ、彼らの所属するHYBE社はビッグヒットエンターテインメントという名前だった。当時とても小さかった会社の現在までのサクセスストーリーには、われわれも感銘を受けた。

上場会社としては株価にも注目したい。KOSDAQ(韓国の証券市場)に上場するエンタメ企業のSMエンターテインメントやYGエンターテインメントは、売上高はエイベックスの半分程度だが、時価総額は倍以上だ。

この差を生んでいるのが何かといえば、期待値だと思う。彼らに対しては、世界に向けて新しいマーケットを作っていくだろうという期待がある。だからわれわれも、希望や期待、元気を提供していきたい。

――国内でもソニーミュージックグループなどの競合が力をつけています。

2010年を過ぎたくらいから世界の音楽マーケットは徐々に右肩上がりになってきてる。理由は音楽配信・サブスクリプションモデルが席巻しているからで、ユニバーサルやワーナー、ソニーはその市場に対する向き合いが早かった。われわれはそこで出遅れてしまった感がある。

ただ、キャッチアップはしつつも、これらの会社とまったく同じことを目指しても仕方がない。エイベックスは、ど真ん中のIPをゼロからつくる会社であって、ユニバーサルやソニーとは少しDNAが違う。そういう意味ではやはり、韓国の事務所と戦っていかないといけない。

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