エイベックスは「全盛期の輝き」をどう取り戻すか 黒岩社長を直撃「世界で戦えるIPを全力で育成」

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――2022年5月に発表した中期経営計画でも、新人アーティストなどのIPへの投資に最大注力することを示しています。

今までよりも高いレベルでの発掘・育成を目指す。ただ可愛くて歌やダンスがうまいだけでは、世界市場では戦えない。音楽性、感性、カルチャーなどを兼ね備えたアーティストを育てたい。世界を目指す意識を始めから持ってもらい、留学などのプログラムも提供する。

大谷翔平選手などもそうだが、日本人が世界で活躍する姿には多くの人が元気をもらうし、誇りに思うだろう。それだけ存在感のあるアーティストを創出できれば、業績は後からついてくる。

環境を提供する代わり、プロの競争を

――確かに昨今のアーティストには、SNSなど多様な発信の機会があり、表層的ではない知性や文化的背景も求められているように思います。

それらを身につけられるよう、機会を提供するのがわれわれの役目だ。例えば海外経験って、語学の面では翻訳技術である程度カバーできるとしても、「あの時代にあの街に住んでいた」みたいなことから醸成される内面というのはある。才能だけでなく、どういう環境に身を置くかだ。

とはいえ、10代でフランスに行ってパリコレやカンヌを見るとか、アメリカ、韓国などでものすごいモチベーションの仲間とレッスンを受けるとか、個人でそういう環境を手に入れるのはなかなか難しい。

当社は、原石といえる若い人たちにそうした世界基準の環境を提供していく。その代わり、競争の原理はしっかり働かせてサイクルを回す。タイムリミットを明確に決めて、ダメならずるずるとは続けない。それはプロの世界の宿命だ。

――そういったプロジェクトは、具体的にどの程度進んでいますか。

「XGALX(エックスギャラックス)」というプロジェクトを進めており、第一弾が「XG」だ。この先5年以内に、XG以外にも複数組のグループ、アーティストを出していく計画がある。

(育成は)「日本式」というよりは、「韓国式」に思い切り振っている。そのため、これまでとは違うテイストのアーティストが生まれてくると思う。ただ、未知の領域なので(すべてがヒットするという)確信はない。

そもそもエンターテインメントというのは、100個やって99個当たらないということがざらにある。それでも1個、ものすごい何かを世に出せれば、それだけで99個全部覆ってしまうだけの威力がある。

次ページ「韓国式」は何が「日本式」と違う?
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