藤井ブームに沸く将棋界と経済界の「意外な接点」 黒子役の銀行マンが語る将棋界の「次の一手」

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7月4日に行われた第93期棋聖戦5番勝負第3局で1手目を指す藤井聡太棋聖(右)と永瀬拓矢王座(写真:時事)

将棋界はいま、相変わらずの藤井聡太ブームに加え、里見香奈女流四冠の「棋士」挑戦に注目が集まっている。

女流棋士は制度上、「棋士」とは別のカテゴリーに属する。里見氏は、これまでの公式戦で好成績を収め、8月からの棋士編入試験5番勝負で3勝すれば、史上初の「女性の棋士」誕生となる。将棋界を超えて、大きな話題となっている。

将棋界はこのところ、めざましい変革期にある。藤井ブームを背景に、新しい企業スポンサーがタイトル戦の協賛に続々と名を連ね、AbemaTVなどの対局ネット配信はすっかり定着し、「観る将」(自らは将棋を指さず、もっぱら観戦を楽しむ)と言われる新しいファン層も広がっている。

2021年11月、豊島将之竜王(当時)と藤井三冠(同)の竜王戦第4局では700万人近いファンがネット観戦するなど、広告媒体としての将棋中継の価値も高まっている。

棋士以外の常務理事が誕生

その将棋界で話題となったのが、現役の銀行マン・佐竹康峰氏(68)の常務理事就任だった。臨時総会での定款変更を経て、2021年6月の通常総会で佐竹氏は将棋連盟で史上初めて、棋士ではない常務理事に就いたのだ。

佐竹氏は1976年に三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。東京スター銀行会長、SBIホールディングス、スルガ銀行の社外取締役を歴任、日本オペラ振興会理事長も務めた。2017年5月に親交のあった将棋連盟の佐藤康光会長から「ガバナンスを見てほしい」と声がかかり、非常勤理事に就任する。当時、将棋界はいわゆる「将棋ソフト不正使用疑惑騒動」で揺れていた時期でもあった。

「(電王戦を引き継ぐ)叡王戦のタイトル戦昇格など、将棋界ではAI(人工知能)の浸透や、バーチャルとリアルの融合が注目された時期だった。対局のルールやチェック体制も変わり、一つの節目となった年だった」と佐竹氏は振り返る。

佐竹氏が担当する棋戦運営部には、3つの仕事がある。

文字通り棋戦対局の円滑な運営のほか、主催者の新聞社やスポンサーとの関係強化、そして将棋連盟全体で進める創立100周年事業プロジェクトだ。

将棋連盟では「創立100周年事業・東西将棋会館建設委員会」を立ち上げ、委員長に羽生善治九段、副委員長に谷川浩司十七世名人が就任した。とくに重要な活動が東西両会館の建設、移転だ。

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