藤井ブームに沸く将棋界と経済界の「意外な接点」 黒子役の銀行マンが語る将棋界の「次の一手」
1976年に建てられた東京・将棋会館、1981年建設の関西将棋会館とも老朽化が進み、2024年までの移転が決まっている。総事業費は48億円。現会館の売却で32億円、残り16億円を、移転先の自治体(大阪府高槻市)へのふるさと納税、クラウドファンディング、企業や個人からの寄付金などで賄う計画だ。
「東西将棋会館建設委員会を中心に、棋士の理事や職員がこまめに企業を回って篤志を募っている」と佐竹氏は言う。
安定した将棋連盟の運営
佐藤会長を含む7人の棋士に佐竹氏も入る常務会では毎週会議を開き、建設プロジェクトの進行を確かめたり、新しい企画を立ち上げたりしている。クラウドファンディングを導入するアイディアも事務局の提案を基にここで議論を深めた。
2022年4月の『月刊経団連』では、羽生九段と藤井竜王の対談とともに、新会館建設への支援を求める佐藤会長の記事広告を仕掛けるなど、フル回転で事業を進めている。
佐竹氏以外の常務理事は、普段は対局に全神経を集中させる棋士たちだ。佐竹氏が“黒子役”として交渉の実務などを担うことで、棋士たちの理事活動もスムーズに運ぶ。佐竹氏は常務理事に就任して以降、「将棋連盟の実務のやり方を変えることはしていない」と言う一方、「新聞社やスポンサーとはしっかりコミュニケーションをとっている」と話す。
「いまの体制で、将棋連盟の運営はこれまでになく安定している」(ある棋士)というのが棋界の見方だ。
『レジャー白書』(日本生産性本部)によれば2009年に1270万人を記録した将棋人口は2020年には530万人に減り、低下傾向にある。ただし、調査対象は15歳から79歳の男女で、将棋人口の一番多い小中学生が除外されている。
このため、将棋連盟では「将棋人口は1000万人」としている。「最近は観る将、将棋メシ、将棋を題材にした映画や漫画などの影響もあり、将棋のファン層はむしろ増えてきている」(広報)という。
一方、タイトル戦を主催する新聞社の経営は部数減少で難しくなる一方だ。「(新聞社は)将棋界が苦しいときも支えてくれた恩人。活字の可能性はまだあると考えている。新聞社との関係はこれからも変わることはない」(佐竹氏)と言うが、「藤井氏というスーパースターがいるうちに、将棋の世界に新しい風を吹き込んでほしい」(将棋に詳しい経済ジャーナリストの岩崎博充氏、詳細は2022年5月5日の東洋経済オンライン配信記事)との声もある。
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