将棋・羽生善治竜王が「弟子」をとらない理由 15歳で棋士に、師匠らとの思い出を告白
師匠の記憶
——師匠の二上達也九段との“師弟対決”の思い出から伺えますでしょうか。
公式戦での対局は、私が五段で18歳のときでした。当時の私の段位だと、かなり勝ち上がらないと師匠と対戦することはできません。盤を挟んで向き合ったときにはやはり感慨深いものがありました。結果的に私のカウンター攻撃がうまく決まって勝つことができたのですが、対局は気がついたら苦しい展開になっていて、経験値の差を感じました。
その後、感想戦をとても長くやってくださいました。普段は30分から1時間なのですが、2時間くらい教えていただきました。あくまで推測ですが、師匠にも特別な思いがあったのかもしれません。
——その対局で二上先生は引退を決意したとも伺っています。
私との対局が1989年3月にあって、翌年3月に引退をされています。私と当たる前に、すでに引退の時期を考えられていたのだと思います。ただ、きっかけになったというのは、あるかもしれません。
師匠が引退したのは、まだ50代でしたし、順位戦もB級1組に在籍していました。あと10年は現役を続けられたと思うのですが、潔い引き際でした。木村(義雄)十四世名人が48歳で引退されているのですが、その影響もあったと聞いたことがあります。
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