将棋・羽生善治竜王が「弟子」をとらない理由 15歳で棋士に、師匠らとの思い出を告白

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森下さんは本当に屈託のない方で、対局中であろうと気にしないんですね。私も普通に話しているのですが、タイトル戦の最中だと思うと不思議な気持ちですよね。話の内容は、まったく覚えていません(笑)。私は数多くタイトル戦を戦ってきましたが、その最中に対局者とこんな長く話したのはあのときだけです。

——深浦(康市)九段とも2度、王位戦を戦われています。

いつも熱い方なんですが、地元の佐世保での王位戦のときはテンションがすごかったですね。王位戦は西日本新聞にも棋譜が出ますから、そういう面でも力が入ることはあるでしょう。そのタイトル戦(2007年度第7局)は名局賞を受賞していると思います。それ以外でも、いつも変わらず対局に気持ちを込めている印象があります。

——藤井(聡太)七段の師匠、杉本(昌隆)七段との対戦は?

杉本さんとは長手数の熱戦の記憶がありますね。師匠の板谷進先生(九段)も長手数の勝負を得意とされていました。将棋の普及にとても力を注いでいらした方で、杉本さんもその心を受け継いでいると感じます。中京地区はそうした基盤があって、棋士も在住していますし、棋道師範の方もいます。そうした中で藤井さんのような存在が出てきたのだと思います。

古き良き昭和の時代

——名伯楽として、一門の所帯も大きい石田(和雄)九段と森(信雄)七段との思い出は?

石田先生と対局した頃は、まだ棋士全体がにぎやかで……(笑)。だから石田先生だけがしゃべっていたわけではないんですよ。午前中の対局はほとんど雑談みたいな感じで。棋士同士でしゃべるだけでなく、記者のほうからふつうに話しかけていました。

今だったら「なんてことを!」って感じでしょうね。持ち時間も長かったですし、お昼ご飯を食べて、それからようやく考え始めるような。のんびりとしたいい時代です。昭和と平成では隔世の感がありますね。

森先生とは、私の順位戦のデビュー局で対戦しているんです。私が関西将棋会館に行くことも滅多になかったですし、初めての6時間の持ち時間でした。

そのとき、村山さん(聖九段)も同じく順位戦のデビュー戦で、初めてお会いしました。今と違ってネットなどの情報がありませんでしたが、関西にすごい人がいるとの評判は聞いていました。そのときは話しませんでしたが、「彼がうさわに聞く村山君か」と。

石田先生、森先生ともに若い人たちを自然に無理なく育てていく雰囲気があります。

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