将棋・羽生善治竜王が「弟子」をとらない理由

15歳で棋士に、師匠らとの思い出を告白

ここで森下九段が突然インタビュールームに入ってきた。理事の仕事で部屋が空いているか確認しにきたらしい。丁寧にあいさつをして出ていった。偶然に一同驚くが、先ほどの話を思い出して場が和む。

若手の新風を受けて

——各先生のお弟子さん、若手の棋士についてはいかがでしょうか。

糸谷哲郎(八段)さんは、才気にあふれている印象ですね。自身の対局以外にも、関西での「西遊棋」などの普及イベントで、事務的な役割までかなり頑張っているようです。

都成竜馬君(五段)は四段になるまでは苦労しましたけど、これからそれを取り返していってほしいと思わせてくれる棋士です。奨励会時代には名人戦、棋聖戦で記録を録ってくれました。

タイトル戦で記録係を任される人は、しっかりとした方が選ばれているんです。谷川先生は、たたずまいや将棋と向き合う姿勢でもいちばんのお手本ですから。彼はそのすばらしさを受け継いでいると思います。

増田康宏君(六段)と佐々木大地君(四段)は、実は彼らが子どものときに対局しているんです。小学生の頃から非常に強かったので、印象に残っています。順調に育っている感じですね。この2人がこれからどういうふうに活躍していくかは、とても楽しみです。

増田君は新人王戦も連覇していますし、実力は相当あります。藤井君がいなかったら、彼がその立場だったと思います。そういう意味でも、これからに注目です。

佐々木勇気君(六段)は、石田先生が目に入れても痛くない可愛がりようですね。小学生の頃からプロ四段といい勝負をしたと聞いています。これからもっと活躍できる棋士です。師匠の石田先生同様、解説での話も面白いので、幅広い活躍が期待できます。

——取材を通して、若い世代の棋士の考え方が、師匠の時代と大きく違うと感じました。昭和の時代の棋士は、将棋を文化として捉えている部分が大きいですが、若手の世代では、技術の習得にかなり傾倒しているように思えます。

プロになること一つとっても非常に難しくなっている時代ですので、ゆとりを持って将棋を考えていく余裕がないのかもしれません。ただ、若いときはある程度、技術だけを求めてやっていくのもいいと思うのです。20代の前半までは、そういうやり方でいいのではないでしょうか。私も10代の頃は自分が強くなること以外は考えませんでした。

——若手の棋士には「詰将棋は技術の向上にはあまり関係ない」という意見もあります。

そういう可能性もあります。「昔はうさぎ跳びしかなかったから、うさぎ跳びをしていた」わけです。時代とともにトレーニング方法は変わっていくんじゃないですか。詰将棋はちょっと根性論みたいな部分もあるので。そういう部分を取り除いて、最近の若手は取り組んでいるのだと思います。

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