「正直不動産」原案者がぶっちゃける業者の選び方 長嶋修×夏原武が語る「日本の不動産市場」
ーー「不動産経済研究所」によると、今年上半期(1月~6月)の1都3県の新築マンションの平均価格は、一戸あたり6511万円と依然として高い状態が続いています。マンションの購入層が気にする「マンションの資産価値」はどう見たらいいのでしょうか。
長嶋:さくら事務所では新サービス「FACTORS4-マンション資産性レポート」を開始しました。相場価格、持続可能性、 居住快適性、流通可能性の4点に着目し、マンションの本質的な資産性を分析・数値化して評価するサービスです。
このところ、さくら事務所に寄せられるご相談で多いのが「このマンションをこの価格で買ってもいいんでしょうか?」というものです。みなさん、マンションの資産価値をものすごく気にされているんです。その価格に確かな根拠はあるのか、その価値は将来にわたって維持できるのか、そういう点に関心をお持ちなんですね。
ただ、「資産価値」とは何なのか。不動産は1にも2にも立地だとよく言われますが、果たしてそうなのでしょうか。
例えば、最寄り駅からのアクセス(立地)、築年数、専有面積や間取り(スペック)などがほぼ同じなのに3000万円近くの価格差が生じている例が見つかりました。
この差はどこにあるのか。私たちの分析によると、それは「管理力」の違いにあるんです。必要な修繕をすることに伴う居住快適性、修繕を含めた適切な維持管理が行われている持続可能性、そしていざ中古市場に出した時にポテンシャルが保てるかという流通可能性、これらを司るのが管理力、すなわち管理組合の運営力なのではないかと考えているんです。
夏原:なるほど。さまざまなマンションを取材していますが、同感です。新築であれ中古であれ、管理の問題はいま、大きなファクターになってきていますよね。管理会社、管理組合が正しく機能しているかどうかはマンションの相対的な価値にものすごく影響が出ているように思います。
マンションの共有部分に平然と自転車が置いてあったり、傘がかかっていたり。「ここは誰のスペースなの?」みたいな、そういう共有部分の汚さは気になりますね。
管理状況が資産価値に大きな影響を及ぼす時代へ
――国の政策としても、2022年4月から「マンション管理認定制度」というものをスタートさせました。マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に国から認定を受けられる制度です。
長嶋:そうですね。そして、その認定結果を金利優遇に結び付けるといったことも具体的に検討されています。これまでブラックボックスだったものが、少しずつ開けてきているんです。
例えばアメリカでは、マンションの管理組合の運営状況が全て1つのデータベースで参照できる仕組みになっています。組合の運営状況が悪いと、その物件を買おうと思っていても銀行のローンが下りなかったりするんです。日本も近いうちに、そうした方向に進んでいくでしょう。