「アベノミクス」で安倍元首相が残した負の遺産 目標未達が逆説的に安倍政権の長期化に作用した
安倍晋三元首相が凶弾に倒れたのは、アメリカが40年ぶりのインフレ経済へ突入し、市場でアベノミクスの見直し議論が始まっているさなかのことだった。
ここでは安倍政権とアベノミクスの関係を振り返り、今後を展望してみたい。
アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という「3本の矢」で構成された。とくに黒田東彦総裁下の日本銀行で実行された異次元の量的・質的金融緩和が柱となった。
国債の大規模購入がその中心で、足元では新発10年国債の日銀保有シェアは約9割に及ぶ。それにより短期金利のみならず、長期金利もゼロ%程度へ人為的に抑制し続けている。
アベノミクスで想定された3つのシナリオ
アベノミクスが始まった2013年当時、想定されたシナリオは大きく分けて次の3つだった。
①日銀の主張どおり、デフレ脱却を実現し、「2年で物価上昇率2%」の目標を達成。日本経済は名目経済成長率3%という高成長や賃金上昇を実現する。
②デフレは脱却するが、人口減少や製造業の海外生産シフトを背景に停滞気味の経済成長が続く。そのため、超低金利政策は長期化し国債増発による財政政策を支える一方、政治家の財政規律は弛緩。日本は官民ともに将来の金利上昇に脆弱な体質に陥っていく。
③日本売りを伴う悪い円安やインフレを招いて金利上昇に追い込まれる。結果、経済や財政が苦境に立つ。
現実は、①や③ではなく、②となったのは周知のとおりだ。
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