話はそれますが、筆者は今回の参院選で、初めて議席を獲得した政党の候補者の演説がうまいと評判を聞いて、選挙戦中に遊説を聞きに行きました。涙を流して、聞き入る人もいるほどの支持者の熱気に圧倒されました。
その候補者が駆使した「人の心を動かすスピーチの要諦」は下記のとおりで、
●「共通の悪者(敵)」をつくる
●わかりやすくシンプルなポイント
●心に残りやすいキャッチフレーズ
●聞く人の「誇り」や「プライド」を刺激する
●「自己効力感」「帰属意識」「多幸感」「浮揚感」を覚えさせる
●「共感」をつくり出す
●「相手の求める言葉」を紡ぎ出す
●人懐っこい笑顔
これらの条件を眺めて、ふと感じたのは、驚くほど、安倍氏の手法に当てはまるということです。
夫婦そろっての生来の育ちのよさゆえなのか、フットワークが軽く、広い交友関係を持っていましたが、自分のファン、支持者、思想を同じくする者、利害関係者というサークルの中の人々の彼への忠誠心、好意、心酔ぶりには驚くべきものがありました。
「強かった日本」への憧憬とともに、多くの人の心に残る
ほめ下手な日本の中高年男性ですが、「〇〇ちゃんは頭がいいんだよ」などと大勢の前で側近のことを臆面もなくほめる。ある意味、無邪気で、卓越した「おだて力」「ほめる力」が多くの人を惹きつけました。
一方で、サークルから外れた人々からは強烈な反発を受けたのも事実です。こうした安倍氏のプレゼンスは、「強い日本」を求める層には魅力的でも、その「強さ」が傲岸さや不遜な印象を作ってしまう結果にも結び付いたという側面もあります。
「政敵」へのあからさまな敵意や攻撃が「大人げない」と受け取られることもありましたし、世論を分断しようとしているとの批判もありました。まさに強烈に愛され、強烈に嫌われたリーダーでもあったのです。
「本当に強いリーダーだった」と菅前首相は評しましたが、落日の日本において、まるで太陽のように世界の舞台で輝きを放った安倍氏の姿は、「強かった日本」への憧憬とともに、多くの人の心に残ることでしょう。
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