「老化の進み具合」はなぜ人によって違うのか 「現役時代の年収」と元気な老後との関連性
この研究では、60歳未満の時点では、寿命はほとんど遺伝子の影響を受けませんでした。しかし、寿命が60歳を超えると、一卵性双生児の互いの寿命がより近づいていく様子が観察されました。双子の一方の寿命が1歳延びるごとに、二卵性双生児ではもう一方の寿命が平均0.21歳ほど延びることがわかりました。一卵性双生児では、平均0.39歳延びていました。
この結果から、遺伝情報は寿命に影響を及ぼしていると考えることができます。ただ一方で、遺伝子情報が似通った双子であっても、そこまで寿命が一致するわけでもないということもおわかりいただけるのではないでしょうか。実際、寿命を決めるもののうち、25%ほどが両親からもらった遺伝情報に左右されると試算されました。
ライフスタイルが遺伝子に与える影響
25%が遺伝情報によって規定されるとしたらその部分は自分の力では変えられないものの、逆に、残りの75%については自分の手で変えられる可能性があるとも言えます。だからこそ、「どのように生きるか」は将来の自分にとってとても大切なことなのです。
一方、遺伝子の重要性は、より長寿になった場合にはより大きくなるようで、特に、女性より男性で大きいかもしれないことが知られています。アメリカでのある研究では、100歳まで生きた人の男性の兄弟は、一般の人と比較して100歳まで生きる確率が17倍高いのに対し、女性の兄弟では8倍だったことを報告しています。逆に言えば、女性ではより、ライフスタイルの影響を受けやすいのかもしれません。
また、「遺伝子」とは言っても、生活環境が遺伝子にも影響を及ぼしているということを示唆した研究もあります。イタリアの研究で、100歳まで生きる人の女性と男性の比率を検討した報告では、サルデーニャ島では性別の比率が2:1であったのに対して、北イタリアの都市マントバでは7:1と、性別の比率だけでも地域によってかなりばらつきがあり、住んでいる地域で大きく差があることから、遺伝子と生活環境の間に何らかの相互的な作用があるのではないかと考えられました。
また、日本の沖縄は世界で最も100歳を迎える人が多い地域の1つですが、沖縄の長寿の理由の1つは、最適な栄養によるものという見解があり、これが遺伝的な要素にも影響を与えているかもしれないと考えられています。このように、ライフスタイルと遺伝子もまた、密接に関連しているのかもしれません。
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