「老化の進み具合」はなぜ人によって違うのか 「現役時代の年収」と元気な老後との関連性

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ここで言う「血管危険因子」というのは、脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、肥満といったものです。これらのいわゆる生活習慣病には、いずれも「自覚症状を感じにくい」という共通点があり、「体調が悪いわけではないのになぜ治療をするのかわからない」と言われてしまうことも多いものですが、実はこんなふうに老化に関わってくるのです。

こうしたことから、生活習慣病を予防し、適切に治療をすることが、「老化を遅くする」ことにつながる可能性が高いということが見えてきます。それはすなわち、健康な食事の選択であったり、運動習慣であったり、禁煙であったりといったことです。

経済状況が老化に影響を及ぼす

さらに、イギリスでも同様の研究が行われています。この研究では、約6000人を17年にわたり追跡調査。重大な病気もなく、身体機能も認知機能も維持された状態を「成功した加齢」とし、どんな人々が“加齢において成功”できたのかを調べました。

すると、最も影響が大きかったのは、30代から50代にかけての経済状況でした。当時、経済状況のよかった人ほど「成功した加齢」と関連をしていたのです。

この研究では、年収約100万円の人から約2500万円の人までが調査されましたが、年収がいちばん低いグループと年収がいちばん高いグループでは大きな差が見られていました。また、経済状況以外の因子では、喫煙なし、健康的な食事、運動のほか、女性では程よい量の飲酒(ビールで1日350mlまで)、男性では職場での上司や同僚からのサポートが「成功した加齢」と関連していました。

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社会的、経済的な地位と健康との関連性はほかにも今までさまざまな研究で指摘されてきています。経済状況がよければ、生活水準も改善され、医療にアクセスしやすくなること、また健康的な生活習慣を取り入れやすい傾向となることも報告されています。こうしたことが積み重なり、老化の進み具合と密接に関連しているのかもしれません。

30代から50代は、大きな病気がない人が多く、体調の変化にも気づきにくい年代かもしれませんが、このときの蓄積が、実は老後の健康に大きな影響を与えている可能性があると考えられます。

「体調は悪くない」「症状もない」という直感はあまり当てにならないかもしれず、やはりこの年代から自覚するしないに関わらず健康的な習慣を身につけておくことが大切で、それが将来の自分を助けることにつながると考えられます。

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