アメリカの女子大生が「幕末日本」を学ぶ理由 日本社会、「ガラパゴス」が秘める可能性

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日本滞在中には、敬語の使い方や日本語特有の間接的な表現に難しさを感じたり、温泉の入り方がわからなかったり、荷物を8「個」持ってタクシーを呼ぶ電話で、うっかり8「台」と言ってしまい、8台のタクシーがやって来るという失敗をしたこともあった。戸惑いも多かったが、それでも日本に対する興味・関心は衰えなかった。

現在、彼女は日本の歴史を専門とし、幕末期にアメリカを訪れた志士たちがアメリカ社会に与えた影響について研究をしている。どうしてこのトピックを選んだのか聞いて、私は大切なことに気づかされた。

影響力はアメリカから日本への一方通行ではない

幕末期、日本は開国をした。ドアを開けば、必ず双方向の行き来、影響が生じる。歴史を見るとアメリカから日本への影響ばかりが目立つが、必ず日本がアメリカ社会に与えた影響もあるはずだ。個人レベルの人の交流でも、個人+個人+個人……=社会である。この疑問に対する答えを知るために、彼女は幕末期に渡米した志士たちの日記や彼らと触れ合ったアメリカ人女性などの記録を中心に調査を進めている。

オックスフォード大学日産日本問題研究所のプレートの前にて。右がナタリア、左が筆者

彼女が母国アメリカの大学ではなくオックスフォードを選んだ理由は、まず著名な教授陣がいるという点。

ここでは、日本に関する歴史学、社会学、人文科学、経済学、政治学の著名な学者がそろっており、各分野の学問を深めることが可能だ。

また、日本とアメリカの関係を学ぶうえでも、イギリスでは、より中立的に研究が進められると感じたのだという。彼女は、今の修士課程を修了したら、博士課程へと進み研鑽を積んで行くことを希望している。

将来は作家となって、あまり知られていない日本とアメリカの関係を歴史的な観点からアメリカの子供たちに伝えていきたい。高校生・大学生への教育にも興味がある。

人間にも社会にも、よいこともあれば悪いこともあるけれど、あまり知られていない人と人との血の通った関係を、研究を通じて紹介することで、今までになかった2国間の関係を明らかにし、相互理解が進むのに貢献したい。彼女はそう言う。私もひとりの友人として、日本人として、彼女の夢を応援したい。

「巨人の肩に立つ」、2つの意味

さて、日本社会に関する研究をオックスフォードでやる意義について話しをする前に、ニュートン(1642~1727年)の言葉を紹介しよう。

“If I have seen further it is by standing on the shoulders of Giants. (私がより遠くを見ることができているのなら、それは、背の高い巨人の肩の上に立っているからです。)”

これは、彼が、「あなたはどうして未来に通ずる偉大な業績を挙げられたのか」と問われたときの言葉だ(ちなみに彼のオリジナルの言葉ではない)。これは、先人たちの積み重ねた発見・業績(巨人)の上に立っているからこそ、新たな発見がある。と同時に、われわれは後世の人たちのための礎(新たな巨人の一部)になっていく、という意味も含んでいる。この言葉はイギリス人が好んで用いる言葉で、2ポンド硬貨の側面に書かれ、私のケンブリッジ時代のカレッジのフェローで、車椅子の物理学者として有名なスティーヴン・ホーキングの著作名にもなっている。

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