3つめは、多くの企業で深刻な「『働かないおじさん』問題」である。
「年下上司」が頭を抱える「働かないおじさん」の存在
ある大企業の部長が頭を抱え、私に愚痴をこぼしたことがある。
その会社では部下との1対1での面談(1on1)を重視し、定期的に行っている。その部長は40代半ばだが、最年少で部長に抜擢された。本来なら、意気揚々と仕事に邁進していなければならない立場なのだが、彼は頭を抱えていた。
部下の多くは自分より「年上」なのだ。「役職定年制」の導入により、課長などの役職から外れた人も多い。
そうした部下たちは面談で、「これといった目標はありません」「定年まで無難に過ごせればいいと思っています」と異口同音に話す。開き直りとも言うべき言葉が並び、まったくエネルギーを感じない。いわゆる「働かないおじさん」だ。
部長は部下たちのモチベーションを高めようと、「会社のビジョン」を熱く語ったりするが、「働かないおじさん」たちはまったく反応しない。これでは部長の努力も水の泡となってしまう。
50歳を過ぎ、役職からも外された多くの「働かないおじさん」は、なんとか「定年まで逃げ切れればいい」と割り切っている。
もちろんまったく仕事をしないわけではないが、自分のこれまでの経験やスキルが使える仕事しかしない。新たなことにチャレンジしたり、新しいことを覚えたりしようとする気はさらさらない。
若手社員たちからは「目の死んでいるおじさんたち」「逃げ切り族」と呼ばれているらしい。そんな人たちがいる職場の雰囲気がよくなるはずもない。
「若手社員までやる気がなくなる」と部長はぼやくが、どう対処したらいいのか答えが見出せていない。
「若手の抜擢」「役職定年制の導入」などは日本企業が再生するためには不可欠な施策だが、このような「活用枯渇病」が蔓延する現場では、そう簡単には事は運ばないのが実状なのだ。
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