最後は「『ゆるブラック企業』になってしまっていること」である。「ゆるブラック企業」は、現在の日本を示す象徴的な存在だと私は考えている。
「ゆるブラック企業」の特徴としては、次のようなものが挙げられる。
・給与も高くはないが、「そこそこ」
・高度なスキルは必要なく、自社の業務を覚えれば「なんとかなる」
・きつくはないが、「やりがいもない」
・「割り切れば居心地はいい」ので、離職率もそれほど高くない
「ゆるブラック企業」の多くは、かつてはホワイト企業であった。しかし、いつの間にか「ラクだけど『やりがい』も『成長』もない『活力枯渇病の会社』」へと転落してしまった。やる気と潜在能力に溢れた若手社員たちは、そんな会社を見限り、逃げ出していく。
「こんなところにいてもスキルも経験も身につかない」「時間を捨てているようなもの」「やる気が吸い取られてしまう」「視野が狭くなってしまう」――
パワハラが横行するようなブラック企業ではないが、「ゆるブラック企業」は最もたちの悪いブラック企業である。会社の根幹が傷んでいるのだから、小手先の対応で治癒するはずもない。
社員を「その気」にさせる「カルチャー」をつくる
私は経営コンサルタントとして多くの企業の変革に立ち会ってきたが、思い返せば、本気で覚悟を持って変革を成し遂げた会社は、数えるほどしかない。
経営トップは「変われ!」と号令をかけるものの、組織がついてこない。過去の成功体験にしがみつき、本気で変わろうとはしてこなかった。
これからの会社に必要なのは、「活力枯渇病」から立ち直り、人を発奮させ、チームで仕事をすることの喜びを説き、社員をその気にさせる「良質な土壌(カルチャー)」をつくることである。
「良質な土壌」ができれば、「強い根っこ(ケイパビリティ)」ができ、会社はどんどん成長していく。時間はかかるかもしれないが、長い道のりを覚悟して、じっくり腰を据えて取り組んでいく必要がある。「健全で良質なカルチャー」なくして、日本企業の復権はありえないことを認識しなければならない。
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