「ASEANは親日」という幻想を打ち砕く中国の攻勢 デジタルに続きEVでも日本企業は出遅れる恐れ

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例えば、自動車分野をみてみましょう。国によって差はありますが、ASEAN最大の自動車市場であるインドネシアやタイでは、約100万台の年間新車販売台数のうち、日本車は8割以上を占めています。

加えて、日本メーカーは、現地で、国内向けのみならず、ASEAN域外向けの輸出生産も行っているところが多いので、現地の雇用なども考えれば、とても大きな存在感があります。

 政府レベルでも、「日・ASEAN包括的経済連携協定」が2010年7月発効し、物品貿易の自由化・円滑化などを継続的に進めています。

さらに、日本政府は、ASEAN加盟10カ国が参加する「東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)」や、シンガポールやベトナムなどASEANの一部加盟国が参加する「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」などを通じて、日本とASEAN諸国との経済的結びつきをさらに強めようとしています。

こうした中、ASEANで急速に存在感を高めている国が中国です。1990年代、ASEANとの貿易の主役は日本でしたが、2000年代後半には、輸出入のシェアで、日本は中国に抜かれ、その後も、その差は拡大し続けています。

日本と同じく、中国にとってもASEANは「隣接する巨大な成長市場」であり、中国企業がさらなる成長を求め、ASEAN市場に目を向けることは当然でしょう。

アリババやテンセントがデジタル分野を支配

中でも、中国が高い存在感を示しているのが「デジタル分野」です。ASEANのeコマースや電子決済などでは、現地企業がやっているようにみえても、その後ろには、中国IT大手のアリババやテンセントがいて、物流も含めた「プラットフォーム」を押さえています。

さらにASEANは、マレーシアやタイなどで、国レベルのデジタル戦略への関与も深めています。日本企業では、eコマース大手の楽天がASEANに進出しましたが、早くも2016年には撤退しています。残念ながら、ASEANのデジタル分野は、中国企業の一人勝ちと言わざるをえません。

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