「スーパーカー」電動時代に問われるその存在価値 うるさくないスーパーカーに魅力はあるのか

拡大
縮小

フェラーリは、プラグインハイブリッドカーの「ストラダーレ」を2019から販売しているが、完全に電動化したモデルの発表は2025年まで待たなければならない。イタリアのマラネッロを本拠とするフェラーリは6月の投資家向けイベントで、電気自動車計画の詳細を明かし、電動モーターなどの重要部品を自社製造するとした。特別な車しかつくらないフェラーリの伝統と匠の技に則った戦略だ。

「電動のフェラーリは、真のフェラーリとなる」。フェラーリCEOのベネデット・ヴィーニャは、プレゼンテーションに先立って行われたインタビューでそう話した。

フェラーリの強力なレーシングチームが持つ技術も流用するという、これまたフェラーリの伝統に則った発表もあった。ただ、フェラーリは「電気自動車のフォーミュラ1(F1)」として構想されたフォーミュラEには参戦していない。ヴィーニャは、フォーミュラEへの参戦を計画しているかどうかについてはコメントしなかった。

一方、フォルクスワーゲンの傘下企業としてサンターガタ・ボロニェーゼ村に拠点を置くランボルギーニは、2023年に初のプラグインハイブリッドカーを発売し、完全に電動化したモデルは2020年代の後半に投入する計画となっている。

エンジンの雄叫びこそフェラーリ、ランボの命

イタリアのスーパーカーの魅力は、内燃機関が絞り出す快音やパワーと分かちがたく結びついている。オーストリアが生んだ名指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンはかつて、フェラーリの12気筒エンジンは「どんなマエストロにも奏でられないハーモニー」の境地に達していると語ったとされる。

「サウンドは、この種の車の重要なアセット(資産)だ」と、アストンマーティンの元CEOで、現在は電動バスメーカー、スイッチモビリティのCEOを務めるアンディー・パーマーは語る。「サウンドで差別化できなくなったら、既存のスポーツカーはその存在価値を維持できるだろうか」。

これは、一部の富裕層だけが関心を寄せる問題ではない。なぜなら、イタリアという国の誇りと威信がかかった問題でもあるからだ。

ヨーロッパ市場におけるフィアットのシェアがわずか4%にまで下落するなど、イタリアの自動車メーカーは全体として、ほとんど取るに足らない存在となっている。

次ページバッテリー駆動への移行で直面する課題
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT