「スーパーカー」電動時代に問われるその存在価値 うるさくないスーパーカーに魅力はあるのか

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電動自動車は、なめらかな加速と静粛性で知られる。しかし、ランルギーニの「アヴェンタドール」やフェラーリの「SF90スパイダー」を買う人は、滑らかさや静かさのために50万ドル以上を払っているわけではない。彼らが求めているのは、むき出しのパワーの感覚なのだ。

例えばランボルギーニのドライバーは、路面から数インチしか離れていない低く構えたコクピットに身を沈め、路面のあらゆる凹凸を意識しながら運転することになる。巨大なエンジンはシートのすぐ後ろに配置され、室内にはエンジンの咆哮が鳴り響く。

ステアリングの反応は精確だが硬く、ドライバーに高いレベルの集中力を要求する。全感覚が研ぎ澄まされるような体験。それは、イタリアの村の環状交差点を通過する瞬間でさえも、モナコグランプリのタイトコーナーを駆け抜けるかのような感覚に変えてしまう。

「この車に乗ると、ドライバーはヒーローになったかのような感覚を味わえる」。ランボルギーニで最高技術責任者を務めるルーヴェン・モールは、その感覚を電気自動車でも再現することが「私たちの主要課題だ」と語った。

電動スーパーカーを欲しがる人なんているのか?

もちろん、スーパーカーの設計においては、電動化がもたらすメリットもいくつかある。電気自動車には長いドライブシャフトやかさばるトランスミッションは不要だし、電動モーターも内燃機関よりはるかに小さい。部品配置の自由度が上がるため、重量配分とハンドリングの最適化には有利だ。

4輪それぞれに独立した電動モーターを組み込み、それらをプログラミングでうまく制御してやれば、コーナリング性能を最大化することもできる。ランボルギーニは車に人工知能(AI)を搭載して、ドライバーの好みや運転スタイルを学ばせ、ハンドリング特性や性能を適宜調整できるようにすることを目指している。

「ドライバーが欲していることを、車が理解するようになるということだ」とモール。

ただ、現在のところ、スーパーカーを求める限られた顧客層からは、電気自動車を待ちわびる声は上がっていない。「『自分がいま持っているエンジン車よりもイケている』。そう思わせる電動のスーパーカーを、まだどのメーカーも世に送り出していないからだ」とモールは言った。

(執筆:Jack Ewing記者)
(C)2022 The New York Times

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