全社員が使える「よろず相談所」
寺川さんとの話し合いに同席したのは、同社の社員が困りごとを相談できる「ヒューマンリソースセンター(HRC)」の担当者。病気の場合は病院探しから家族の相談支援まで対応する。
病気に限らず、若手なら資格取得や子育て支援、中高年なら親の介護やマネープランの相談にも乗り、社外の社労士やFP(ファイナンシャルプランナー)、弁護士とも連携する。2013年に取締役会直下の「よろず相談所」として設置された。
松下産業社長の松下和正さんは、残業時間の多さとメンタル不調対策は以前からの課題だったと話す。退職者が多い上司の個別指導や、人事考課でのマイナス査定も実施したが、なかなか改善は進まなかったという。
そこでHRCを設置したところ、プライバシーが保護された環境で、ためらわずに何でも相談できると、残業もメンタル不調問題も次第に減っていった。
現在、がん関連では治療と仕事の両立を目指して出社か、在宅勤務の人が合計9人いる(2022年5月末)。社員数240人規模の中小企業の対応としては手厚い。
「在宅勤務で治療中の人なら治療経過の報告や、自身が担当する現場業務の進捗などを共有できるソフトもあります。在宅でも孤立感を与えず、現場からは個別に励ましのメールなどを届けられています」(松下社長)
組織における「心理的安全性」を確保しようとする姿勢が伝わってくる。
2020年10月、寺川さんは在宅勤務で復職。本人によると体力面では従来を「100%」とすれば「50、60%」程度。往復約2時間の通勤を省けるのは体力面でも、またコロナの感染予防の両面でありがたかったと話す。
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