そこから一念発起して、フルタイムのバイトに加えて、週3回別の病院で夜診のバイトも始めました。それで、手取りも毎月30万円程度になったので、家賃で6万円引かれ、光熱費が4万円程度かかっても、20万円は残ります。そこから、15万円を貯金に回し、残りの5万円でなんとかやりくりしていました。もう、毎日安い食材を買って、自炊して弁当作って、外食とおやつは一切なし。ストイックですよね」
その後、1年かけて月に15万円の貯金を貯め続けた前田さんは、アルバイトの身分ながら、ついに第一種の支払いも終えた。このときまだ27〜28歳であった。
ありがたい返済免除、しかしデメリットもある
本連載では以前、別の看護師の女性のケースを取り上げた。その女性はそもそも看護奨学金制度の存在を知らなかったが、もちろんこの制度にもデメリットもある。合わない職場で働くことになった前田さんのケースは、やや極端なものの、その一例だろう。
「新人の看護師の中には『修学資金の返済免除があるから病院を辞められない』と思っている人が多いですし、SNSを見ても奨学金の返済に悩んで『死にたい』『死ぬほど辛い』と投稿しているアカウントもよく見かけます。
でも、自分に合った職場がある可能性も当然あるので、そちら側に目を向けるというのは、別に逃げではないことを知ってほしいです。
また、一口に修学資金と言っても、条件はさまざまです。私が借りていた都道府県の修学資金はアルバイトでもフルタイムだったら返済免除になりましたが、グループや個々の病院になると、病棟、外来、アルバイト、常勤などで、返済免除の条件が変わってくるはず。
だから、『就職先の病院が自分に合わなかった場合』のことも考えておかないといけないと思うんですよね」
その後、奨学金をすべて完済したことを両親に報告したことで、ようやく和解。「勘当」と言われた時とは打って変わって褒められ、実は彼女のためにこっそり貯めていたという学資保険の200万円が前田さんの口座に振り込まれた。実際は娘のことを気にかけていたようだ。
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