人口増加率トップは35%増の三重県朝日町、その成長の理由は? 人口増減詳細解説・10年国勢調査速報
2010年国勢調査の人口速報値によると、05年から10年までの5年間に最も人口が増加したのは横浜市で、その数はおよそ11万人。2位の川崎市(9.9万人)以下、上位30都市のうち、東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏が22都市を占める一方、関西圏では大阪市(3.8万人、10位)、神戸市(1.9万人、26位)、西宮市(1.7万人、30位)の3市にとどまった。
また3位の福岡市(6.3万人)、13位の札幌市(3.4万人)、21位の仙台市(2.1万人)、24位の広島市(2.0万人)のように、人口減少が見られる地方にあっても、その中心都市には人口流入が続いている。
減少数は北九州市が1.6万人と最も多く、函館市(1.5万人)、いわき市(1.2万人)と続いている。上位30都市のうち、4位の青森市(1.2万人)、5位の長崎市(1.2万人)など県庁所在地は6市、それ以外では、北九州市をはじめ、いわき市、呉市、下関市、佐世保市、横須賀市、今治市、八戸市など、とくに人口20万人規模以上の大都市が目立つ。
これら都市の多くは、戦前から高度成長期にかけて鉄鋼や造船など重工業における産業集積が進み、それにともない人口も増加したが、その後のグローバル化にともなう環境変化などの影響を受け、また主要な産業を持つがゆえの対応の遅れもあって、他都市よりも人口の減少が大きくなった。
人口増加率35%の三重県朝日町、「つくばエクスプレス」沿線自治体も急増
人口増加率では、トップの三重県朝日町が05年の前回調査比35.3%という急激な増加をみせた。朝日町は三重県の北東部、四日市市と桑名市にはさまれた面積わずか6平方キロメートルの小さな町だが、町内を国道1号線、JR関西本線、近鉄名古屋線が貫いており、交通の便は非常によい(地図マーカーA)。町内には東芝三重工場が立地しているうえ、隣接する四日市、桑名両市のほか、名古屋市を中心とする愛知県内へ通勤する人も多く、ベッドタウンとしての性格が強い。朝日町では、05年前後より、町の西北にある丘陵地に造成された大規模ニュータウン(あさひ向陽台、白梅の丘)の住宅分譲が行われており、これまでに約1000戸、3000~3500人が新たに流入したことが最大の要因だ。
2位の東京都中央区、8位の豊島区、11位千代田区、22位港区は、都心回帰にともなう超高層マンションの分譲が寄与。同様に、上位にランクした多くの自治体でマンションやニュータウン開発を背景に人口が増えたと見られる。
茨城県守谷市16.3%、同つくばみらい市10.5%、埼玉県八潮市9.9%、東京都足立区9.5%--。
上位30位にランクインしているこれら4市区に共通しているのは、「つくばエクスプレス」の沿線自治体であるということだ。東京・秋葉原と茨城県つくば市を結ぶこの路線は05年8月に開業、都心部へのアクセスが劇的に改善したことを受け、沿線での大規模な開発が進んでいることが影響している。「つくばエクスプレス」沿線では、上記4市区のほか埼玉県三郷市、千葉県流山市、同・柏市、茨城県つくば市でも人口が増加している。
減少率高い山村・離島、「限界自治体」も8町村
人口減少率は、奈良県野迫川村が29.7%で最も大きく、以下、高知県大川村、北海道占冠村、奈良県黒滝村などの山村、および沖縄県座間味村や北海道奥尻町、粟島浦村などの離島の自治体がほとんどを占めている。また実質破綻し、市民サービスを大幅に削減している北海道夕張市も16位にランクされた。
これら自治体の多くは、第1次産業以外に主要な産業がないこともあって、人口に占める高齢者の比率が高い。今回の国勢調査による年齢区分別の人口はまだ公表されていないため、参考までに10年3月末時点の住民基本台帳人口をもとにすると、全人口に占める人口65歳以上の高齢者の比率は、野迫川村45.3%、大川村47.3%など軒並み40%を超え、全国平均の22.3%を大きく上回っている。このうち6位の奈良県川上村など8町村が50%を超えており、長野大学の大野晃教授が提唱する「限界自治体」となっている。
(加藤千明 撮影:尾形文繁 =東洋経済オンライン)
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