大人の都合や気分で子どもに接する「親の末路」 どんなときも「一貫した態度」でいることが大切

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先ほどのミホちゃんの例に戻りましょう。

ミホちゃんのお母さんは、本当は甘いものをあまり食べさせたくないのです。虫歯が心配なので、小さいうちは極力与えないようにしていました。

でも、幼稚園に通うようになって、お友達からもらったぷっちょやグミなどの味を覚えてしまい、ねだるようになりました。「少しくらいいいだろう」と、一度あげてしまったが最後、毎日ほしがるようになったといいます。

本当ならば、お母さんはぜったいに与えないか、「1個だけ」というルールを貫きとおさなければならなかったのです。たいていのお母さんは「たかがぷっちょ1個じゃない」と思うかもしれません。でもその「たかがぷっちょ1個」が、子育てがうまくいくか、いかないかの大きなわかれ道になります。

ミホちゃんは「もう1個ほしい」となれば、「キーーー‼」と金切り声を発します。でも「キーーー‼」で要求がかなうと、将来、ちょっと気に入らないことがあるとこの声を発し、要求がとおらないとキレる子になってしまいます。じつはたいへんな問題をはらんでいるのです。キレて脅しているのですから。

私はこのことをお母さんに説明し、理解してもらいました。そこでいっしょにこんなルールをつくりました。

やってもいいけど、かならず損をさせる

「キーーー‼」を言ったら、ミホちゃんはおやつぬき。1個だけはあげる予定だったけど、むしろゼロにする。

とにかくこれを守らせること。それをお母さんと約束しました。

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ただ、これまで何もルールを決めてこなかった家庭で、いきなりルールのある生活を送るのはたいへんです。そのお母さんも、「キーーー、言うよ」と脅されたら、どう対処すればいいのかわからないと、不安そうです。

「言いたければ言いなさい、と言えばいいんです」と言うと、「そうなんですか⁉」と驚いた様子です。

「言っていいよ」と言えばいい。そして「でも言ったら、ぷっちょはなしよ」と言えばいいのです。

今までは「キーーー‼」がお母さんの「弱み」でした。「弱み」をもっていると、子育ては不利になってしまいます。「やるならやっていいけど、かならず損をさせること」という親の新しい姿勢が大切になります(ただし、体罰は使えません)。

親がこうした姿勢をとったり、かつてとは真逆の姿勢に変わることは、並大抵の努力では足りないでしょう。親がそのときの気分や都合に流され、子どもに向き合う面倒から逃げないことが大切なのです。

“金太郎飴お母さん”は、このような努力とともにつくられます。

奥田 健次 専門行動療法士、臨床心理士

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おくだ けんじ / Kenji Okuda

兵庫県西宮市出身。学校法人西軽井沢学園創立者・理事長。桜花学園大学大学院客員教授。法政大学大学院、愛知大学、早稲田大学など非常勤講師を歴任。一般社団法人日本行動分析学会理事、日本子ども健康科学会理事など。発達につまずきのある子とその家族への指導のために、全国各地のみならず海外からの支援要請にも応えている。2018年に日本初の行動分析学を用いたインクルーシブ教育を行うサムエル幼稚園を開園。著書に『拝啓、アスペルガー先生』(飛鳥新社)、『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』(だいわ文庫)、『メリットの法則-行動分析学・実践編』(集英社)など多数。https://kenjiokuda.com/

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