日本と中国「正常化」という永続的プロセスの本質 日本に求められるパワーと国際秩序における役割

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次に、2008~2010年のリーマンショックと尖閣諸島の領有権をめぐる日中の対立である。中国は、台湾侵攻に不可欠な東シナ海と南シナ海の制海権と制空権を握るため第一列島線を突破させない、すなわちA2AD(接近阻止・領域拒否)の軍事ドクトリンを追求した。2008年5月の胡錦涛訪日の際、合意された日中間の「戦略的互恵関係」は立ち枯れ状態となった。

また、中国は2010年9月の尖閣ショックに関連してレアアースの事実上の対日禁輸を行った。それまで一応建前としては維持してきた「政経分離」が崩壊した。

そして、2020年以降のコロナ危機とウクライナ危機。日本は医薬品の原材料だけでなくワクチンの注射針も中国に依存していることを知った。市場支配、先端技術覇権、勢力圏をめぐって中国が地経学的攻勢を強める中、日本は「チャイナ・プラス・ワン」やリショアリングを志向するものの、対中投資は増加し続けている。日本のGDPに占める対中輸出の割合(2020年)は34%に達し、台湾(32%)、インドネシア(30%)、フィリピン(27%)を上回る。日本の対中依存度と地経学的脆弱性は高まる一方である。

ウクライナ戦争に対して、岸田文雄首相は「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」との認識の下、対ロ制裁措置を実施している。日本の対応は、ロシアの軍事侵攻を失敗させ、対価を払わせることで、台湾に対する中国の軍事侵攻のハードルを上げる対中抑止力構築の性格をも帯びつつある。“中露ブロック”の重圧をすでに日本は感じ始めている。

一貫して変わらないアメリカの存在の大きさ

日中関係の環境の大きな変化の中で、一貫して変わらないのはアメリカの存在の大きさである。日本の対中関係においてアメリカは最も重要な要素であり、日本の対米関係において中国が最も重要な要素であり続けてきた。1972年9月の田中訪中そのものがその年2月のニクソン訪中の連鎖反応の側面を持った。天安門事件に対する対中経済制裁とその後の再関与への切り替え、さらには中国の世界貿易機関(WTO)加盟支援も、日本はアメリカと歩調を合わせた。

しかし、2010年代に入って日米の対中政策にズレが生じた。民主党政権時代の「東アジア共同体」構想と尖閣諸島の領有権問題、安倍政権時代の首相の靖国神社参拝と米中間の「新式の大国関係」構想などいずれもそうである。

次ページ「日米中の罠」ともいうべき三角関係の陥穽に注意
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