日本は、「日米中の罠」ともいうべき三角関係の陥穽(かんせい)に注意しなければならない。日米中の三角関係の安定・維持は戦前、戦後を通じて日本の外交政策の最大の難問であり続けた。そこには、勢力圏、人種、イデオロギー、核、P5、“瓶のふた”、“力の真空”、G2、人権、「冷戦時代の残渣」など、三角関係をゼロ・サム化させる力学が潜んでいる。そして、これからの時代、最も恐ろしい「日米中の罠」は米中対決の中で日本が外交の選択肢を奪われてしまう罠である。
日中関係を安定させるうえで、アメリカとの不断の意思疎通ときめ細かい政策協調を行わなければならない。日米関係を強化するに当たって、中国との安定的な関係を維持するよう細心の配慮が必要である。
日本に望まれる役割
その際、日本は、パワーと国際秩序の両面においてより自立した役割を探求することが望まれる。
パワー・バランスにおいては、アメリカとの同盟深化と対中抑止力強化を引き続き図ることが肝心である。その際、日本自らの抑止力をも強固にし、自らの防衛にもっと責任を持たなければならない。アメリカは今後、世界への選択的関与の度合いを強めるだろう。同盟は責任分担と協同作業へと向かう。日米同盟は今後、相互運用性にとどまらず相互依存性を強めざるをえない。
同時に、中国との関係を安定させるには、経済安全保障を強化し、中国の経済的威圧に対抗できる抑止力とレジリエンスを実装する必要がある。
日本の生産性と国際競争力を高めることが大切である。中国の戦略理論家、閻学通は「中国が強くなったから現状維持が変わったことはその通りだが、アメリカと日本が弱くなったからそれは変わったこともまた確かなのだ」と喝破している。中国を「修正主義勢力」と呼ぶのなら日米もまた修正主義勢力ではないか、というのである。中国のこの種のレアルポリティークの詭弁を打ち負かすには日本の不断の成長と革新が必要である。
対中関係経営においては、中国の軍民融合政策と国家情報法の下、「政経分離」は便法としても使えないことを知るべきである。中国が彼我の政治体制の非対称性を搾取し、「影響力工作」を推進するのを防ぐため関係維持における機会と権利義務の「相互主義原則」を導入するべきであろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら