独自の働き方を切り開く転勤族の妻たち ハンデもブランクもキャリアに変わる

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転妻集団を率いる奥田美和さん(中央)と、甚田知世さん(左)(撮影:梅谷秀司)

TKT48というグループをご存じだろうか。「TKT」とは「転妻(てんつま)広報大使」の略。「47都道府県+海外」で暮らす転勤族の妻(以下、転妻)による、全国規模のイベント企画集団だ。

「転勤族パワーで地域活性化」を掲げ、地元人でも観光客でもない、転妻ならではの視点からフェイスブック上で地域情報を発信中。さらに、各地域での転妻向けイベントを始め、企業・自治体とキャリアセミナーを開くなど、さまざまな企画を転妻たちで手掛けている。独自の活動が注目され、メディアからの取材依頼も増えているそうだ。

社会復帰のロールモデルを作りたい

この元気な転妻集団をプロデュースしているのが、ワークスタイル・クリエイション代表の奥田美和さん(39)。奥田さんも、夫の転勤により国内外で6回もの引っ越しを経験している現役の転妻だ。にもかかわらず、SE職を中心に、正社員を含めいろいろな雇用形態で5業界11社にて仕事を続けてきた。

一般的に、転妻は「辞令による突然の引っ越しリスク」を抱えているため、正社員の道は厳しい。転勤先によっては求人すらないという場合もある。仕事を得たとしても転勤の度に就活はやり直し。このハンデだらけの状況にも屈せず、奥田さんはキャリアを積んできたのである。

だが2013年にショックな出来事が起こる。当時、非正規雇用のSE職として働いていた奥田さん。プロジェクトリーダーを務めていたにもかかわらず、ある日突然、契約を打ち切られたのだ。理由は、「正社員を増やすから」。激しく落ち込み、丸1日大泣きした。しかし、これを機に「起業してやる!」と一念発起。女性の新しい働き方を創出したい――そんな思いを胸に、2014年1月に起業し、冒頭の「TKT48」を組織化した。

奥田さんは、起業以前から、ランチ会の開催や1000人以上の転妻に対するプチカウンセリングなど、ボランティアでさまざまな転妻支援を行ってきた。TKT48は、その転妻支援の機能を引き継いでいるが、実はもうひとつ大きな目的がある。

それは、「社会復帰した転妻・駐在妻」というロールモデルを作ることだ。「企画力、営業力、管理能力、さらにリーダー経験があると復職しやすい」というのが奥田さんの持論。TKT48の活動は、これらのスキルを磨くことができると考えており、現在、意欲のあるメンバーにはさまざまなプロジェクトを任せている。「将来的には、正社員復帰や中間管理職・管理職レベルの転妻を増やしたい」と、奥田さん。ハイスペックな転妻を育てて新たなロールモデルを提示することで、転勤・出産・育児などで「企業で働き続ける」選択肢を失った女性に希望を持ってもらいたいと思っている。

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