人材派遣会社が主催したとある主婦向けセミナーでひときわ、注目を集めている講師がいた。
自分のキャリア、母となるメリット、子育てママのビジネススキルなどについてやさしい口調で語りかけ、参加者たちを引き込んでいく――。「癒やされる」「こんな主治医がほしい」「がんばろうという気になる」と、子育てママに大人気だった。その声の主は、国立保健医療科学院に勤務する産婦人科医の吉田穂波さんだ。
31~40歳までに5子を出産
31歳で第1子、33歳で第2子、35歳で第3子、37歳で第4子、40歳で第5子を出産したというからすごい。3歳、1歳、生後1カ月と3人の子どもを連れて夫と渡米し、ハーバード公衆衛生大学院に留学した経験を持つ。
決して、恵まれた環境を生かして順風満帆のキャリアを歩んできたわけではない。子どもが増えるほど、自分の存在意義が低くなると感じることもあったという。夫の留学に伴い海外で生活したときは、「給料のない自分にアイデンティティクライシス」を味わった。
東日本大震災のあとに、被災地の妊婦や赤ちゃんの世話をするプロジェクトを手掛けたが、「予想以上に活動範囲が広がってうまくいかなくなってしまい、バーンアウト(燃え尽き)の状態になったこともある」。
しかし、この経験が契機となって、吉田さんは臨床医から公衆衛生の研究者へとキャリアをシフトすることになった。さらに、「なぜ人にもっと頼まなかったのか。なぜ自分だけでかかえ込んでしまったのか」と、他者に助けを求め、快くサポートを受け止める”受援力“の大切さを痛感し、世の中に「受援力のススメ」を発信し続けている。
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