この加速の背景には、実際の税・社会保険料が増えたこともありますが、分母である国民所得が伸び悩んでいることも大きく影響しています。2010年から2020年の10年で「税・社会保険料」は、年平均2.9%増ですが、「国民所得」は同0.3%増にとどまっています。
所得は増えないのに、税・社会保険料が増え続けているということです。これが「生活が苦しくなった」と言われる一つの裏付けです(さらに言えば、税収の中でも特に消費税が増えているので、一般生活者の負担感は、数値以上に高まっていると思われます)。
少子高齢化の進展を考えると、今後も「税・社会保険料」の負担増は避けられないので、経済が成長して「国民所得」が増えなければ、「国民負担率」はますます上昇していきます。
次に諸外国との比較です。先進国36カ国(OECDに加盟している38カ国のうち、国民所得の計数取得ができない2カ国を除く)について、各国の実績値が出そろっている2019年の「国民負担率」をみると、最も高いのはルクセンブルグの93.4%、続いてフランスの67.1%です。日本は上から25番目の44.4%で、決して高いほうではありません。
では、日本は、今後も国民負担率が上昇しても、大丈夫なのでしょうか。ここで考えなければならないのは、税・社会保険料負担が「今や将来の生活の安心感」につながっているかどうかです。
「税・社会保険料は「貯金」だから大丈夫」
筆者は、英国駐在時代、国民負担率が高いスウェーデンの友人に「高い税金や社会保険料を支払って、生活が大変ではありませんか」と問いかけたことがありました。返答は「税・社会保険料は『貯金』だから大丈夫」というもので、とても驚いた覚えがあります。
所得の多くの割合(北欧諸国は総じて60%前後)を税・社会保険料として納めていても、「これらは、いずれ自分に戻ってくるもので、老後や、何らかの理由で収入が途絶えても、国が助けてくれるから安心」という訳です。負担率自体が高くても、将来、戻ってくるものという「貯金感覚」が持てれば、実際の「負担感」は軽いようです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら