唐突に飛び出した「資産所得倍増プラン」
岸田文雄首相は、5月5日、外遊先のロンドンで「資産所得倍増プラン」を突然表明した。
日本の個人金融資産2000兆円のうち半分以上が預金や現金で保有されていると指摘し、これらを投資に向かわせるため、少額投資非課税制度(NISA)の改革や、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象年齢を、現行の64歳以下から65歳以降にも広げることを検討するとした。そして、今年末に「資産所得倍増プラン」を策定するという。
これは、いくつかの点で誠に不思議な政策だ。
まず誰の目にも明白なのは、これが富裕層への優遇策であることだ。
振り返ってみると、昨年9月の自民党総裁選で、岸田氏は「令和版所得倍増」を掲げた。そして、金融所得課税の引き上げを主張した。
就任時には、「格差是正と分配」を強調した。
しかし、就任早々に株価が大幅下落するという「岸田ショック」に見舞われたため、金融所得課税の強化は姿を消した。
その後の衆院選の公約や所信表明演説では、「所得倍増」という言葉は影を潜めてしまった。
そして、「新しい資本主義」とは一体何であるかの検討が続けられた。
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