私は、こうした変化を格別悪いことだとは考えていないのだが、政府や日銀にとって不都合であることは明らかだ。
なぜわざわざ不都合なことを行うのだろう?
日本の家計は不合理な資産運用をしているのか?
第2は、より基本的な問題だ。
「貯蓄から投資へ」とは、いま初めて言われることではない。これまで何度も繰り返し言われてきたことだ。
この発想の基本にあるのは、「現在の日本の家計の資産運用は不合理な形態だから、これを変えるべきだ」という発想だ。
しかし、そもそも日本の家計は不合理な資産運用をしているのだろうか?
ここで重要なのは、資産選択は、期待収益率だけでは判断できないことだ。これに加えてリスクを考慮することが必要だ。
株式投資はリスクが高いので、それを補うために、期待収益率が高くなっているのである。
これはファイナンス理論の最も基本的な命題だ。
だから、銀行預金の収益率がほとんどゼロであり、株式の期待収益率がプラスであっても、株式投資がよいということにはならない。
「貯蓄から投資」と言う不思議なスローガンは、ファイナンス理論を無視したものだと言わざるをえない。
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